【タイトル】
blue to blue
【アーティスト】
久宝 留理子
【リリース】
1995/10/30
【トラック】
[1]コンクリートジャングル
[2]プライド
[3]情けなくって
[4]倦怠期
[5]雨が止んだら
[6]北へ
[7]Wedding dance
[8]泣くだけ泣いたらおやすみ
[9]あした元気になぁれ
[10]blue to blue ~青空に祈って~

【総合評価】3.1


 1969年生のシンガー。後に作曲も行ってはいるのでシンガー・ソングライターと言えなくもないが、作品ではほぼ作詞のみを行っている。


 1990年にデビューをしたものの、当時としては華やかなスタートとならなかったらしい。力のある女性ヴォーカルがこの時代も活躍するわけだが、バンドなりグループなり流行・ブームに乗った形態が多い。女性ソロシンガーもいなかったわけではないが、シンガー・ソングライターか地盤の強いファン層を持ったシンガーでないと存在感を出すのが難しい。

 当アーティストは突如現れたのではなくデビューまでタレント性を持った歌手として育成されてきた経緯がある、そういう人間を最優先で求める時代が少し前に終わっていたというのは運が悪かった。一方で相当目をかけられていたのか事務所が諦めきれなかったのか、明確な方針転換もしていない。アニメ主題歌でも食い込めばまだ良かったのだが…とにかく日の目を見ることがない中でCDのリリースは続けられた。


 そして1993年、9枚目の『男』が50万枚超えのヒットとなる。作曲はあの伊秩弘将、「あの」と言われてピンとこない方は4人組グループ[SPEED]を思い浮かべていただければ話が早い。要するに[SPEED]でヒット曲を連発する前に久宝留理子でヒット曲を生み出していたのである。

 翌年には11th『早くしてよ』がこれまたヒットする。ミリオンヒットとまではいかなかったものの、それまで100位以内に入ることすらなかった実績からすれば大躍進であり、本人の存在は印象付けられたと思う。恐らく何処かで不意に聴く機会があるならば『男』と『早くしてよ』どちらかの可能性が高い。


 今作品はその後の7thアルバム、シングルは15thの『プライド』と16thの『コンクリートジャングル』の2曲。全楽曲の作詞を本人が担当し、『あした元気になぁれ』のみが本人作曲の作品。伊秩弘将作品も『情けなくって』の1曲。


 海外はどうか分からないが、日本の場合ミリオンもしくはそれに迫るセールスでないと後世に中々伝わりきらない。久宝留理子も平成生まれ特に20~25歳以下、下手をすると20代後半でも知らない世代かもしれない。

 シングルリリースは2001年までになっているが、この年に[SOPHIA]のキーボード・都啓一と結婚しているため一線から退いた形。2001年ならば20代半ば以上の世代ならある程度知っているのではと思えるかもしれないが、そこは正直怪しい。怪しいというよりも、20代は厳しいかなという印象。


 知っている世代でも取り上げて「懐かしい」という反応ならばまだ良い。これが「そう言えば、(そういう歌手も)いたね」だとか「(そこを選ぶあたり)渋いね」と返されると、こちらとしては正直あまり良い気がしない。

 1つ突き抜けて売れたから良いという単純な話でもない、かといってこうして取り上げるのは売れなかったからではない。「まぁまぁ売れた」という表現もなんだかなと思う。


 名前の響きを聞くと「瑠璃子」とイメージしてしまいそうだが、本名としての「留理子」であるのであしからず。(完)