【タイトル】
TIME NOTE
【アーティスト】
奥 華子
【リリース】
2007/3/21
【トラック】
[1]さよならの記憶
[2]僕が生まれた街
[3]ガーネット (弾き語りversion)
[4]プレゼント
[5]恋
[6]小さな星
[7]恋の天気予報
[8]君のためならできること
[9]変わらないもの
[10]桜並木道
[11]タイムカード

【総合評価】3.3


 1978年生のシンガー・ソングライター。その歌声からして自分と同世代かちょっと上かと思っていたが、結構離れていた。記憶違いでなければ晩期の「うたばん」に出演していたような気がする、2005年デビューなので年代としては民放ゴールデン・音楽トーク番組の最後の世代なのかもしれない。


 当アーティストの特長と言えばその伸びる声。ただ伸びるのではなく明瞭な声がずっと続いていく、なおかつビブラートは本当に最後の部分だけ。ビブラートを効(利)かせる事が「歌手としてのクオリティ」に直結する点のように感じられなくもないが、実際のところは何でもかんでもという訳ではないと考える。曲によって、本人の歌唱によって、時代によって…つまりは適宜に出来る人間が本当の一流歌手。


 このアルバムを取りあげるにあたり、普通なら『ガーネット』を中心に考えるだろう。名を知らしめたシングル曲でしかもピアノの〈弾き語りversion〉とくればそれこそ若い女性をターゲットに「ジーンとさせる/泣かせる」タイプの正に典型例。

 そういう楽曲を斜に聴く気もなければ、その状況で泣く人間を白い目で見る事も無い…多分。ただ、性別や年代が違うと全体の見方は変わってくる。当方の場合はマイノリティーの変わり者だけなのかもしれないが。とにかく手に取ったのが2ndアルバムのこの作品だったのは偶然。


 個人評での中心は『さよならの記憶』と『僕が生まれた街』の冒頭2曲。これで(最低限それなりに)良いアルバムだなという判断が6~7割を占めてくる、無論このあと尻つぼみになり「勿体無かった」というような感想を述べるケースもあるがそこは今までの経験がモノをいい、大体の見通しはつく。評価がすこぶる良くなる事は多くないが、印象が悪くなることもまずない。

 どう評価が転ぶのか終盤まで分からないまま良い意味で裏切られたのは最近の評でいうと[キンモクセイ]の2ndアルバム『風の子でいたいね』(評145)くらい。あのバンドは正統派をまとった異色のような存在であったから、どの作品も毎回最後まで評価の決定がつきにくいのだが。


 『桜並木道』は当ブログにおける「春」「桜」が対象のテーマ別選曲へ候補曲として入るのだが、率直にトップ5には厳しく推薦曲も微妙なところ。曲としては及第点といった感じだが、最後のアウトロを長くして聴かせる部分を作った点は評価できる。


 1970年代で、ピアノを主体としたシンガー・ソングライター、そしてレーベルが「ポニーキャニオン」とくれば[aiko]が大枠としては同じくくり。言うまでもないが、タイプは全く異なっている。奥華子の楽曲で易々と泣くよりも、[aiko]の楽曲を自らの境遇と重ねる女子ほど「こじらせ」度は高いかもしれない。これはヤブヘビだったか。(完)