某大手レンタル店舗では一日中ずっと宣伝なりCD紹介なり楽曲紹介なり一定のプログラムが流れ続けている。個人的には中古販売店(「OFF」じゃない方)で聴かれる、店内アナウンス以外はずっと楽曲を流すタイプでしかも妙に知らない楽曲ばかりを突くあたり非常に面白いのだが、それぞれに販売のスタンスが違うので仕方の無い部分はある。問題はその紹介する楽曲やCDについての話。


 いわゆる流行りの楽曲については正直聴きたくもないが、否定出来る強い理由も無いので触れる話ではない。問題視したのはCMに使用されている楽曲の紹介、単刀直入に言えば往年の名曲をわざわざ紹介する必要は無いと考える。

 以前にも似たような事を述べたような記憶があるが、とにかく何でもかんでもアシストするようではいつまでたっても聴く側の探求心を鍛えることが出来ない。気になったので調べてみて詳細が分かる、そして聴いてみる、反応が良ければ最終的に購入まで辿り着く。気になって調べた時点でもう一種のトレーニングになっている、周りで流れている楽曲が気になったから判別するアプリをかざしてみた、これでも十分経験値を積んだことになる。当方などはそのCMが流れるのを粘り強く待って流れた瞬間に右下に小さく表示されるであろうクレジットをチェックしたりしている。

 それを「今このCMで流れている楽曲はこれですよ」といともたやすく紹介する意味がどこにある。新進のアーティストであったり百歩譲って新曲ならば良いとしても、過去にヒットしていた楽曲を流すのはラジオだけで十分。その時代を知らない若い世代が気になったとしても、このご時世検索すれば大体の事は分かるであろうから自力で何とかしてほしい。


 一時期よりは大分おさまったが、そもそもCMにおける過去のヒット曲の採用が多かったこと。当方の固定観念でしかないかもしれないが、その時期しかないCMはBGMで流れる楽曲もセットで記憶としてパッケージされるので新曲を採用するのが一番適当であるように思える。コピーライターがキャッチコピーを入れて、旬のタレントが出演して、今時の楽曲が入ってバチッと決まる。今のやり方として古いとも言われそうだがそれが未だにスタンダードであるように思える。新曲をさりげなく宣伝できる良い方法という考え方は今は無いのだろうか。


 この話を洋楽に広げるとまた事情が違うので難しい。アーティストも楽曲も超有名で、などというのは新旧あるがまだいい。楽曲は有名なのだが誰か別の人間がカヴァーしているケースや、楽曲自体は昔のままで誰もが聴いたことがあるのに楽曲名もアーティスト名も知らない楽曲というのはどう評していいのか分からない。後者に関してはまた採用されたのかという、前にも使われた記憶が何処かにあっても結局何にも分かっていないから採用に納得はしつつ釈然としない。しかもキャツチーなものだから大半の人間には簡単にスルーされている。


 CM採用の経緯について素人は知る由もないので過去のヒット曲を使うなと抗議する理由は何処にもない。しかし、それを行うことによって何処か記憶のねじれを将来引き起こしてしまう可能性があることを留意しておかなければならない。大袈裟でなおかつ些細なことだと言えばそうかもしれないが、ヒット曲とともに強烈なインパクトを残しているCMが今そこまで多くないことは薄々ながら皆が感じている事だろう。そして店舗側にCM曲を紹介する「優しさ」は必要ない。(完)