中学校、高校の授業で出て来た漢詩。

 これがけっこう簡単に作れるといったら、驚きますか?


 実際、簡単なんですよ。

 短歌や俳句、狂歌や川柳などよりある意味では簡単かもしれません。


 ただ、ちょっと根気がいります。例えるなら、ジクソーパズルを組み立てるような根気です。

 それでもピースの数はごく少なく、最低八ピースですから安心してください。


 「春眠暁を覚えず」なんて有名な詩を学習した方、たくさんいらっしゃるでしょう。あれが八ピース。

 「月落ち烏啼(な)いて霜天に満つ」あるいは「故人西の方黄鶴楼を辞し」なんてタイプだと、十二ピース。

 「国敗れて山河在り」だと十六、そして最高でも二十四です。


 この十から二十四のピースの当てはめ方を知る(憶える必要なし。その都度、確認すればいいんです)だけで、もう立派な詩人です。


 そしてここでは、その当てはめ方=ルールをご紹介していくことにします(漢詩人じゃないので技術的なことは無理ですけれど)。


 リハクやトホにはもちろん及ばなくても、今どき漢詩を作る人ははっきりいって非常に少ないです。もしかしすると、しまいにはあなた一人になるかもしれません。


 そのときにはもう、人間国宝レヴェルです。


 ……あ、これは、いいすぎでした。


 でも、余り人のしないことをするというのは、カッコイイことではないですか。

 では、前置きはこれくらいにして、ルールの説明を。



●漢詩の種類


 このあたりは学校時代の復習。

 唐時代(千四百~千百年ほど前)に成立、隆盛を極めたのが漢詩です。

 絶句と律詩、そして五言と七言とがあり、まとめると以下の四種類。


 五言絶句……一行が五字、全四行
 七言絶句……一行が七字、全四行
 五言律詩……一行が五字、全八行
 七言律詩……一行が七字、全八行


 一行が五字なら五言、七字なら七言。四行なら絶句、八行なら律詩。それを組み合わせただけです。

 他にも色々ありますが、これだけ、つまり中学生レヴェルまでを抑えておくのみです。



●脚韻と平仄


 これも、中学のときにやりました。


 五言なら偶数行末で、七言なら最初の行と偶数行末で「韻を踏む」のでした。

 「音読みして最後の部分が共通した音だったら韻を踏んでいる」と教えるわけですが、しばらくはこれだけでよいと思います。


 もう少し突っ込んで申しますと、中国語の各語には、四種類のイントネーションがあります。平声、上声、去声、入声がそれで、まとめて四声といいます。また、詩の場合、平声を上平と下平とに分けます。

 橋と箸、雨と飴が違うように、イントネーションによって意味がかわることがざらにあるわけで、中国人同士が話していると大声になるのには、そんな理由があります。ぼそぼそいうとイントネーションがよく分らない。


 でも、漢詩を作るのには、四声を憶える必要なんてありません。

 二種類だけです。

 その二種類は「平」と「仄」で、上記の四声のうち、平声のみ「平」、あとはみな「仄」のグループに入るので楽ちんです。

 それで、その詩が「平」で始まるものを「平起式」といい、「仄」で始まるものを「仄起式」といいます。