おととい、北海道神社庁報といっしょに復興祈願祭の祝詞例文が届きました。

 訳して、書き下し文と原文をご紹介します。


平成二十三年東北地方太平洋沖地震復興祈願祭祝詞(例)


心に思うのも恐れ多い某神社の大前にて、宮司某が恐れながら申し上げますことは、さる三月十一日の未(ひつじ)の刻に起った東北地方太平洋沖地震、さらには大津波の災害を蒙って、多くの都・道・県に大きな損害をもたらしました。それぞれの市町村の有様は、家は壊れ、海は荒れ、土は裂け、山は崩れ、多くの人々がたちまちのうちに命を絶たれたこととなってしまいました。

また神社や神職らも多くが災害を被ったとの知らせを受けたのは実に畏れ多き極みです。
そこで、今大前にお食事、お酒、さまざまな美味の物をたてまつり、いつも大神たちの高く尊い御神徳を仰ぎ申し上げている氏子・崇敬者らが大前に参集しまして復興祈願祭をお仕え申し上げお願い、お祈り申し上げる様子を平安にお聞き届けくださいなさいまして、日々起っている余震や津波をお鎮めなさって、一日も速やかにもとの様子にお戻しくださいまして、わが大和の国を永久にお守り、恵み幸をくださいまして、災害に苦しむすべての人々の身も心も平穏にお守り導きなさいませと恐れながら申し上げます。

●書き下し文
掛けまくも畏き某神社の大前に宮司氏名恐み恐みも白さく、去し三月十一日の未刻に起りし東北地方太平洋沖地震、更には大津波の災害を蒙りたるに数多の都道県に大なる損ひを齎したり。各々の市町村の有様は、家は壊れ、海は荒れ、土は裂け、山は崩れ、許許多久の人々瞬間に玉の緒を絶たれる事と成りぬ。
又神社、神職等も多数に災害を被れる由、知らせを受けたるは実に畏き極み成り。
故、今し大前に御食御酒種種の味物を献奉り、常に大神等の高き尊き大神徳を仰奉る氏子崇敬者等、大前に参集ひて復興祈願祭を仕奉り乞祈奉る状を平らけく安らけく聞食し給ひて、日々起れる余震津波を鎮め給ひて、一日も速けく旧の状に立帰らしめ給ひて、我が大和国を永久に守り恵み幸へ給ひ、災害に苦しむ諸人等の身も心も平穏に守り導き給へと恐み恐みも白す。

●原文(宣命体)
縦書、< >内は他の字より小さく右に寄せて書かれています。

掛<介麻久母>畏<伎>某神社<乃>大前<爾>宮司氏名恐<美>恐<美母>白<左久>去<志>三月十一日<乃>未刻<爾>起<里志>東北地方太平洋沖地震更<爾波>大津波<乃>災害<乎>蒙<里多留爾>数多<乃>都道県<爾>大<奈留>損<比乎>齎<志多里>各々<乃>市町村<乃>有様<波>家<波>壊<礼>海<波>荒<礼>土<波>裂<介>山<波>崩<礼>許許多久<乃>人々瞬間<爾>玉<乃>緒<乎>絶<多礼留>事<登>成<里奴>
又神社神職等<母>多数<爾>災害<乎>被<礼留>由知<良世乎>受<介多留波>実<爾>畏<伎>極<美>成<里>
故今<志>大前<爾>御食御酒種種<乃>味物<乎>献奉<里>常<爾>大神等<乃>高<伎>尊<伎>大神徳<乎>仰奉<留>氏子崇敬者等大前<爾>参集<比氐>復興祈願祭<乎>仕奉<里>乞祈奉<留>状<乎>平<良介久>安<良介久>聞食<志>給<比氐>日々起<礼留>余震津波<乎>鎮<米>給<比氐>一日<母>速<介久>旧<乃>状<爾>立帰<良志米>給<比氐>我<賀>大和国<乎>永久<爾>守<里>恵<美>幸<閉>給<比>災害<爾>苦<志牟>諸人等<乃>身<母>心<母>平穏<爾>守<里>導<伎>給<閉登>恐<美>恐<美母>白<須>

 神社本庁の祝詞には大まかに「制定文」と「例文」とがあります。「制定文」はそのまま奏上しなければなりませんが、「例文」の方は字そのままの意味で、書き換え可能です。

 また本文中に「宮司氏名恐み恐みも白さく」とあるように、恐らくこの祝詞は、総代さんなど氏子・崇敬者が参集するような、公的な祭祀を想定しているので、宮司ではない私など出る幕がなく、僭越なのではありますが、慎んで作文してみたいと思います。

掛けまくも畏(かしこ)き某神社の大前に宮司氏名恐み恐みも白さく、去(いに)し三月(やよひの)十一日(とほかあまりひとひ)の未刻(ひつじのとき)、陸奥(みちのく)の東(ひむがし)の方(かた)に、大地震(おほなゐ)あり、やがては大津波さへ押し寄せ来て、山崩(やまく)え、大地(おほとこ)歪み、果ては許許多(ここだ)の人の命をしも失ふは、最最(いといと)可惜(あたら)しくも悲しき極みになも有りける。
又天つ社、国つ社と神職どもが日に異(け)に仕へ奉れる数多(あまた)の宮(みや)・社(やしろ)も損はるるは、げに畏きことにこそ。
故(かれ)、今し大神(等)の弥(いや)益益(ますます)に霊幸(たまぢは)へ坐(ま)す時には有らずや、大稜威(おほみいつ)以(も)て堅く守り給ふべき時には有らずやと、大前に参集ひて御食御酒種種の味物を献奉り、畏(おそ)れ慎みひたぶるに乞ひ祈(の)み奉る御氏子・崇敬者の清き正しき真心をば平らけく安らけく見そなはして、今ゆ往先(ゆくさき)
大御心の随(まにま)に、なほも起れる地震(なゐ)をば疾(と)く速(すみや)けく静め奉りて山川をば旧の状に立返らしめ奉り給ひ、今度(こたび)の災(わざはひ)をば被れる諸人の身も心も安く穏(おだひ)に、夜の守・日の守に守り導き幸へ給ふが故に、吾睦わご大神(等)と称辞竟へ奉らくと恐み恐みも白す。

 なおこの祝詞は、だいたい以下のような内容を考えて作文しました。

心に思うのも恐れ多い某神社の大前にて、宮司某が恐れながら申し上げますことは、さる三月十一日の未の刻、東北地方の東方にて大地震が起き、すぐさま津波まで押し寄せて来て、山は崩れ、大地は歪み、果ては多くの人命をも失うこととなったのは大変残念で悲しき極みでございます。
また天つ神の社、国つ神の社と神職が日々お仕え申し上げている多数の神社も損害を被ったのは、大変恐れ多いことでございます。
そこで、今こそ大神(等)がいっそうお力を下さいますときではございますまいか、いっそう堅くお守りくださいますときではございますまいかと、大前に参集しまして神饌や御酒、様々な美味の物をお供え申し上げ、恐れ慎みながら一心にお願い、お祈り申し上げる氏子・崇敬者の清らかで正しい真心を、平安にご覧くださいまして、これから先は
天皇陛下のお心のままに、やはり起っている地震を一刻も早くお静め致し、山や川はもとの姿にお戻し申し上げなさり、今度の被災者すべての身も心も守り導き、幸いをくださいますので、われらが親愛なる大神様(たち)とお称え申し、ことばを尽してお祭り申し上げますと、恐れながら申し上げます。