昨日のつづき、ここで祈年祭祝詞については終了です。



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http://ameblo.jp/shinkawa-koutai/entry-10806206733.html

2はこちら
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ここでことばを改めまして
伊勢にいらっしゃる
天照大御神の大前に申し上げます


大御神様が遙に見渡していらっしゃる四方の国は
空の果て、青雲のたなびく極み
白雲が低く降るその場所までも


海を行けば
船が棹や舵の乾く間もないほど漕いでゆき
へさきが支えて進めなくなるほどの遠くまで


陸を行けば
馬の足の爪が支えて停まってしまうほどの遠くまで


大御神様への献り物を、荷造りをしっかりして
岩や木で起伏のある道を踏みしめ
絶えることなくみなが往来しております


さらには、狭い土地は広く、険しい土地は平らに
遠い国はたくさんの綱をつけて引き寄せるように
大御神様が委ねられているので


こうして、横に長い山のようにたくさん積んでお供えし
その残りを天皇陛下がお召しあがりになることでしょう

また、天皇陛下のお治めになるこの時代を
長い時代となるよう永遠にお守り申し上げ
立派な時代であるよう幸を与えてくださいますので


清らかな我らが男神様、女神様と
鵜という鳥が首を地面につけたときのように
鄭重に拝礼致しまして
天皇陛下の立派な幣帛を捧げます


神主、祝部よ、以上のように
天皇陛下がおっしゃった
みなよく承れ


御県にいらっしゃる
清らかな神様の前にて申し上げます
高市 葛木 十市 志貴 山辺 曾布と
御名を申し上げ


この六つの場所で取れる甘い野菜、辛い野菜を
天皇陛下が幾久しくお食事としてお召しあがりになるので
天皇陛下の立派な幣帛を捧げます


神主、祝部よ、以上のように
天皇陛下がおっしゃった
みなよく承れ


山の口にいらっしゃる
清らかな神様の前にて申し上げます
飛鳥 石村 忍坂 長谷 畝火 耳无と
御名を申し上げ


あちこちの山に生えている大きな木、小さな木を
根元と梢を切って持って参りますことで
天皇陛下の麗しい御殿をお造り申し上げることができます


そうして天を覆い太陽からお隠れなさって
四方の国を安らかな国として
平穏にお治めになっております


ですから、天皇陛下の立派な幣帛を捧げ
このように称えてことばを尽くすことです


神主、祝部よ、以上のように
天皇陛下がおっしゃった
みなよく承れ


水分にいらっしゃる
清らかな神様の前にて申し上げます
吉野 宇陀 都祁 葛木と
御名を申し上げ


清らかな神様たちが
稲穂をたくさんお恵みくださったなら
まずは神様へと初めてとれた穂を

そのままでも、酒と醸してもお供え申し上げ
御名を称え、ことばを尽くしてお祭りしまして


そうして、その残りは
天皇陛下の朝夕のお食事として幾久しく
お顔のお色も麗しく、お召し上がりになりますので
天皇陛下の立派な幣帛を捧げ
このように称えてことばを尽くすことです


神主、祝部よ、以上のように
天皇陛下がおっしゃった
みなよく承れ


さらにことばを改めて
忌部の者どもが、そのなよなよした肩にたすきをかけて
十分に身を清めて調え申し上げた幣帛を
神主、祝部よ、謹んで授かり、まちがいなく捧げ持ち帰り
神々に差し上げよとの
天皇陛下の仰せである
みなよく承れ



●原文の書き下し文
 『祝詞』(青木紀元・おうふう)による


辞別きて、伊勢に坐す天照大御神の大前に白さく、皇神の見霽かし坐す四方の国は、天の壁立つ極み、国の退き立つ限り、青雲の靄く極み、白雲の墜り坐向伏す限り、青海の原は棹柁干さず、舟の艫の至り留まる極み、大海に舟満ちつづけて、陸より往く道は、荷の緒縛ひ堅めて、磐根・木根履みさくみて、馬の爪の至り留まる限り、長道間无く立ちつづけて、狭き国は広く、峻しき国は平らけく、遠き国は八十綱打ち挂けて引き寄する事の如く、皇大御神の寄さし奉らば、荷前をば皇大御神の大前に、横山の如く打積み置きて、残りをば平らけく聞こし看さむ。又、皇御孫の命の御世を、手長の御世と、堅磐に常磐に斎ひ奉り、茂し御世に幸はへ奉るが故に、皇吾が睦神漏伎・神漏弥の命と、うじ物頚根衝き抜きて、皇御孫の命のうづの幣帛を称へ辞竟へ奉らくと宣ふ。
御県に坐す皇神等の前に白さく、高市・葛木・十市・志貴・山辺・曾布と御名をば白して、此の六つの御県に生ひ出づる甘菜・辛菜を持ち参り来て、皇御孫の命の長御膳の遠御膳と聞こし食すが故に、皇御孫の命のうづの幣帛を称へ辞竟へ奉らくと宣ふ。
山の口に坐す皇神等の前に白さく、飛鳥・石村・忍坂・長谷・畝火・耳无と御名をば白して、遠山・近山に生ひ立てる大木・小木を、本末打切りて持ち参り来て、皇御孫の命の瑞の御舎を仕へ奉りて、天の御蔭・日の御蔭と隠れ坐して、四方の国を安国と平けく知ろし食すが故に、皇御孫の命のうづの幣帛を、称へ辞竟へ奉らくと宣ふ。
水分に坐す皇神等の前に白さく、吉野・宇陀・都祁・葛木と御名をば白して、辞竟へ奉らば、皇神等の寄さし奉らむ奥つ御年を、八束穂のいかし穂に寄さし奉らば、皇神等に初穂は穎にも汁にも、みかのへ高知り、みかの腹満て雙べて、称へ辞竟へ奉りて、遺りをば皇御孫の命の朝御食・夕御食のかむかひに、長御食の遠御食と、赤丹の穂に聞こし食すが故に、皇御孫の命のうづの幣帛を称へ辞竟へ奉らくと、諸聞き食へよと宣ふ。
辞別きて、忌部の弱肩に太だすき取り挂けて、持ちゆまはり仕へ奉れる幣帛を、神主・祝部等受け賜りて、事過たず捧げ持ちて奉れと宣ふ。