神主さんて、体力使わんでしょ?


 何度か、そう聞かれたことがあります。


 確かに、通常のおはらいでは、体力は余り使いません。大きなお祭りでも、色々なモノを運ぶ所作や、膝を使って進み、退く作法などバンバンありますけれど、「体力を使う」とは少し違うような気がします。

 各種の祭事・神事がいちばん大事であるのは、もちろんです。しかし、その準備や境内の環境を整える作業では、けっこう体力を使います。


 いえ、ホントです。ウソじゃないですって。


 おふだやお守りの入ったダンボールを移動したり、石油ストーブを担いで階段を昇ったり、社務所の窓ガラスをはずして運んだりなど、モノを運ぶ機会がけっこうあります。また、今の時期は雪が降ったら雪かきしますし、屋根に積もった雪を落としもします。

 地鎮祭など外に出かけるお祭りでは、当社では祭壇などすべて持って行きますので、その設置や撤去の一切をやります。手伝ってくださる建築会社さんもありますが、ひとりで全部やることも少なくありません。


 大きい神社で、部署が色々分かれているなら、ある部署にいる間は全然体力を使わない、ということはあるかもしれません。

 ですが、当社のように小さな神社では、そうは行きません。私がおはらいをしている間に、宮司が除雪作業している、なんてことも少なくありません。そういうとき、もちろん宮司は白衣も袴もつけていず、雪かきしやすい格好をしています。するとですね、参拝される方の多くは、


 作業のおじさん、としか見ないんです。


 いえ、これもホントの話ですよ。いわゆる神主の格好をしていなければ、何年神主として飯を食っていようが、何千件おはらいをご奉仕しようが、神主として見てくれないんです。

 それで、例えばおふだのまつり方について質問を受け、白衣を着ていない宮司と白衣の私が立っていまして、同じことを申し上げたとします。するとまず間違いなく、


 私のいうことの方を信じる。


 ええ、そうなんです。これも本当です。逆に私が白衣を着ていなかったら、


 なんだ、このアンチャン! 神道オタク?


 くらいに思われるはずです。

 白衣を着ていないときにも神主に見られる、そうなると、なかなか大変です。でも、本来そうあらねばならないのかもしれません。