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 これまで、私がもっともたくさんご奉仕しているのは地鎮祭です。

 それで本日、今年最後の地鎮祭に出かけて参りました。この写真の祝詞も、今年最後に作った祝詞ということになりそうです。


 此(こ)の処(ところ)をば祓(はらへ)して厳(いつ)の湯庭(ゆには)と斎(いは)ひ定(さだ)めて、招(をぎ)坐(ませ)奉る皇神(すめがみ)の御名(みな)は白(まを)さく、


 この場所をお祓いして、立派な斎場と定めまして、お招きお据えいたします立派な神様のお名前を申し上げますことは、


 埴安(はにやす)の比古(ひこ)比売(ひめ)神(がみ)と御名(みな)は白(まを)し、辞(こと)竟(をへ)奉(まつら)ば、今度(こたび)【氏名】い、是(これ)の【住所】の此(こ)の処(ところ)を千代(ちよ)の家処(やどころ)の甘(うま)き家処(やどころ)と撰(えら)び定(さだ)めて、


 土の男神・女神とお名前を申し上げて、言葉をお尽くし申し上げますなら、このたび【氏名】が、この【住所】のまさにこの場所を、ずっと長く住むべき、よい住所と選び定めて、


 根(ね)の土(つち)引(ひき)始(はじ)めむと為(す)るに依(よ)りて、地鎮祭(とこしずめのみまつり)仕(つかへ)奉(まつ)る状(さま)を安(やす)く穏(をだひ)に聞(きこし)食(めし)て、


 工事を始めようとするので、地鎮祭をご奉仕いたします様子を、安らかに穏やかにお聞き届けくださいまして、


 今(いま)ゆの後(のち)は、【施工者】を始(はじ)めて、関係(かかづら)ふ匠(たくみ)等(ら)に諸(もろもろ)の障(さはり)在(あ)らしめ給(たま)はず、築(つき)立(たて)行(い)かむ真木柱(まきばしら)は巌(いはほ)如(な)す重(おも)く、引(ひき)据(す)うる礎(いしずゑ)は弥(いや)固(かた)らかに成(なし)給(たま)ひ、軈(やが)ては厳(いか)しく麗(うるは)しく事(こと)成(な)し遂(と)げしめ給(たま)ふが故(ゆゑ)に、


 この先は、【施工者】を初めとして、関係する大工さんたちに一切の障害がないようになさり、これから築き立てる柱は岩のように重く、引いて据える礎はますます固くなさり、すぐさま立派に麗しく工事をなしとげさせますために、


 御食(みけ)御酒(みき)種種(くさぐさ)の物(もの)に玉串(たまぐし)をも捧(ささ)げ奉(まつ)りて、称辞(たたへごと)竟(をへ)奉(まつ)らくと白(まを)す


 お米やお酒、色々な物に、玉串をも捧げ申し上げ、称賛し言葉をお尽くし致すことです、と申し上げます。


 

 毎回自己ベストを目指しつつ作文するのはもちろんなのですが、こうして記事にしてみると直したい部分もあります(「聞しめして」を「見そなはして」など)。

 なお、すべて読みも書き加えましたので長く見えるものの、実際はかなりこれ、短い祝詞です。二、三分で奏上し終えると思います。これは単に長い祝詞が嫌いなだけで、他意はありません。ですから、同じ地鎮祭祝詞でも作る人の考えによっては、長くなることがあります。私自身は最低限のことばをもって、神様に申し上げたいことが書ければよいと考えますし、例祭や式年祭などの重儀でもないのに、飾り立てた祝詞を奏上するのはどうかと思いますので、こんなに短いわけです。


 上の写真の字は、ふつうに墨をすって、小筆で書いたのですが、宮司夫婦(どちらも)に活字みたいと言われてしまいました。自分としては、明治初めくらいの公文書、特に宣命(天皇のご命令)のような字体がいいなと思っていて、(現時点での)理想です。ちなみに、神職養成課程の学生の頃、先生から祝詞は楷書で書くべきで、崩してはいかん! とうかがいまして、そのときの目が怖かったので一生、行草書で祝詞を書くことはないと思います。 


 

↓おまけ 最近の社務所は人の出入りが激しく出勤して来ませんけれど、社務ネコのアヤです。


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