どうしてこんなにやっかいなんだろう
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一輪を持って帰ることもままならない
日頃の悪行の罰のように、
棘はわたしの手に傷を作る。
「二度と取ってやるものか・・・」
小さな傷は厄介だ。
血がでたら数日は不自由になる。
棘を取るのは私の得意だ。
エコーで確認した通りに開ければ、
見事な全像が取り出せる。
丁寧に、丁寧に、ムダな傷と痛みが出ないように、手の先に神経を行き渡らせる。
息を止めて。
皮膚科は小さな外科。
お雛様のケースにジャンプをした男の子に埋まったガラスの破片をとったり、お酒の入った恋人どうしの喧嘩で、彼女が噛みちぎってしまった彼の耳を繋ぎ合わせたり、海辺で刺さった貝の破片、臍に埋まったピアス、お腹のシコリから生きてる幼虫を、取り除いたり、する。
絆創膏は何をやっているんだろう。
手を洗うたびにフニャフニャ取れて痛くなる。
軽口ばかりたたくのは
恥ずかしいから。
強がりばかり言うのは
傷つきたくないから。
へらへら笑っているのは
心を見透かされたくないから。
嘘を付くのは、予防線。
実家に帰ると、その香りにうっとりとする。
父は滅多に帰ってこない娘の部屋にも、一輪のもぎたての薔薇を飾る。
「そんなに大量の棘を装備しなくてもいいのに。貴女の棘には何か意味があるの?」
親には全てがお見通し。
素直にその姿をさらけ出すデメリットが、いったいどこにあるのだろう。
「完璧な立ち振る舞いをしたいの。もぎ取られるのが怖いのよ。怖いの。」
深紅の薔薇は手に入らない。
今年の母の日も、大量の薔薇が目の前にあったというのに、短気な私はいじやけて、花屋に花束を買いにいってしまった。