「運命の交差点」
いくつかの偶然といくつもの運命が重なり合って僕たちは巡り逢った。それは僕に巨大なスクランブル交差点を思い起こさせる。縦横無尽の人の流れが信号が青になると共に入り乱れ、すれ違っていく。何人もの人間が肩と肩がぶつかったりして「すみません」と謝り合ったりしている。
「あ、すみません」
僕は彼女と初めて出会ったとき、おそらく身体がぶつかったか触れてしまった時にそんな謝罪の言葉を口にしたように思う。
「どうして同じ新入生なのに敬語なの?」
彼女は笑いながら言った。それで僕は余計に顔が赤くなってしまった。彼女は慌てる僕の様子を可笑しそうに眺めていたが、そこには人を馬鹿にした様子は全くなかった。その大学の新入生のための説明会での初対面のとき、偶然の(あるいは運命の)糸と糸が触れ合い何かが紡ぎ出されようとしていた。「あ、すみません」。僕はその交差点で彼女と肩がぶつかって謝った。彼女は振り返り、そんな僕の様子を可笑しそうに眺めている。「いいのよ、そんなに謝ったりしなくても」、そう言って微笑みかけてくれる。運命に導かれて出会っただけなのだから、まるで僕にそう語りかけるように。