「意識の中の話」
僕はまず、文章を書く前に意識のウォーミングアップをするところから始める。意識の中の足首をぐりぐりと回してみたり手首を捻り、首をぐるぐると回してみる。具体的に言うならば誰か自分の好きな作家の文章を読んだり、立ち上げたスマートフォンの画面の中の原稿を前に瞑想を試みたりといったことだ。そしてあらゆる意識の中の関節がある程度スムーズに稼働することをたしかめたなら、ゆるゆると走り始める。頭の中に漠然とあった言葉や概念を文章の形に置き換えてみる。そしてその文章の書き始めがスムーズに始められたなら、そこからは徐々にペースを定めてリズム良く書き進めて行く。僕は意識の中で風を切り、近所の散歩中の人々を追い抜かして駆けて行く。そこまで気持ちよく書き進められたなら、僕の中の目的はほぼ達せられたと言って良い。なぜなら僕がほぼ毎日文章を書く目的は、自分の意識の中のコンディションを整え、思考のメカニズムをスムーズに保つ事だからだ。
やがて僕は軽い汗をかきながらも清々しい気持ちで家路につく。そして軽いステレッチをしながら明日のジョグに備えるのだ。