私が3歳4.5か月の冬のある朝、私は布団の中で、人の声や景色が湧いてくる不思議な箱に出くわした。恐らくそれまでにも家にあったのだろうが、その時に改めてその存在を認識したのだろう。その後しばらくたってからそれがテレビだと認識することになる。
家の外では、白い冷たいものが降っていたようだが、部屋の中では布団の中で温かさに護られていた。その不思議な箱からは、何やら心地よい歌声が聞こえて来た。「ゆ~き~のふ~るま~ちを~…」
ダ-クダックスによる男性混声合唱だった。
家の外は、真っ白な雪景色で、粉雪が深々と降っているのが見えていた。
「雪の降る街を」の短調な旋律には鉛色の雪降りの景色のイメ-ジを持ったが、長調に転調する後半部分には爽やかな朝日が昇るイメ-ジを見ることが出来て、そのコントラストには、幼心にも芸術性を感じた。
これが私の音楽との最初の出会いだった。
雪の降る街を 雪の降る街を
想い出だけが 通りすぎてゆく
雪の降る街を
遠い国から 落ちてくる
この想い出を この想い出を
いつの日かつつまん
温(あたた)かき幸せのほほえみ・・・