フィラリア感染症(犬糸状虫症)とは?

 夏に向かい暑くなり、フィラリア症の予防が始まる季節ですが、フィラリア症という言葉で犬糸状虫症と連想される方は多くないと思います。フィラリアとは犬、猫、フェレットなどの心臓に寄生するそうめん位の太さの寄生虫です。寄生されると、呼吸不全、心不全、肝不全、塞栓症などを引き起こし、最後には死亡する病気です。春になり、蚊が飛び始め、フィラリアを持っている動物の血を蚊が吸血し、さらに、他の動物の血を吸う際、痒い液と一緒にフィラリアの子供(ミクロフィラリア)を体内に入れ、感染が完成します。また、フィラリア症の治療は外科的なつり出し法がありますが、手術には特別な技術が必要なことと、麻酔のリスクが付いて回ります。内科療法には注射を行い、心臓の中にいる、成虫を殺す方法があります。これは、手術のリスクはありませんが、治療により死んだ成虫が血管や臓器に詰まる危険性もあることから、フィラリア症は治療より予防が重要と言われています。

では、フィラリアの予防はどのようにすれば良いのでしょうか?フィラリアの予防は蚊が媒介するミクロフィラリアを殺すことで可能です。ミクロフィラリアは動物病院で発売されているフィラリア予防薬を月に1回ワンちゃんに与えることで、可能となります。現在では、おやつタイプの予防薬も発売され、飼主さんも喜んで与えられるようになっています。北海道は、数年前までフィラリアの感染数は低いといわれていました。しかし、ここ数年、札幌市内でもフィラリア感染犬が多く認められるようになりました。フィラリアは地域性があるので、同じ恵庭、千歳でも地域により、感染数が異なるといわれています。

フィラリア症は犬に限ったことではなく、猫にもフェレットにも感染することが知られています。さらに、人にも感染することもあるといわれています。予防すれば、フィラリア症になることはないので、予防が重要な病気の1つです。

  ここまで進歩している動物医療

 人の医療と同じように、動物の医療もかなり進歩しています。

大学病院では、現在、内科、外科はもちろんのこと、眼科、腫瘍科、画像診断科、行動治療科、皮膚科、また、大学によっては、外科も1外科、2外科などと、分かれています。それくらい、医療の細分化が進んでいます。それに伴い、今までの動物病院は血液検査機器、レントゲンくらいしか無かったのが、超音波検査機器、内視鏡、CT,MRIなどの大型の検査機器も導入されています。今までは、大学に行かないと検査できなかったものも、近くの動物病院でできるようになっています。それら、最新の検査機器の導入に伴い、手術機器もどんどん、新しくなっています。電気メスに始まり、超音波メス、半導体レーザー、白内障の手術器具などなど、多種多様になっており、安全に、かつ侵襲の低い手術が可能になっています。注射や、飲み薬も動物用のものが開発され、慢性の便秘の猫の薬、痛み止め、関節炎のお薬、また、精神不安のワンちゃん用の薬なども開発、販売されています。

 現在、動物医療は細分化が進み、得意な医療があるものの、法律の問題で眼科、皮膚科などの明記ができません。病院によっては、東洋医療(針・お灸・漢方薬)などをメインにされている先生もいらっしゃいます。さらに、整形外科が得意な先生、エキゾチックが得意な先生、鳥の専門、猫の専門病院もできています。夜間救急動物病院も札幌には年末年始も夜間のみ診察しています。

このように、動物の医療を取り巻く環境はよくなっています。情報が多い分、飼い主さんも、今まで以上に知識が必要になり、獣医さん任せにできない部分もあるかと思います。

 では、どこで、その高度・先進医療が受けられるのでしょうか?北海道の場合、北海道大学、酪農学園大学、帯広畜産大学に高度医療機器、検査機器、治療機器が導入されています。大学での診察・治療は開業獣医師からの紹介がほとんどなので、かかりつけの獣医師に相談されることをお勧めします。さらに、ほとんどの動物病院が獣医師会に入っており、どこで高度・先進医療が受けられるかは把握しています。

 動物は家族の一員となり、人によっては、家族以上の絆で結ばれています。その家族が1日でも長く生きてもらうように、さらに、良い医療を受けさせるように努力するのは当たり前になってきました。

 さらに、最近では動物保険も出てきており、高くなる医療費の軽減に一役かっています。

動物保険でだけではなく、火葬、葬儀、お墓まで、人と変わらないのが現状です。

 しかし、これらの医療、また愛情を捧げられているペットばかりではありません。保健所には毎日のように、飼えなくなった動物が持ち込まれています。この現実を知ることも必要であると思います。

 現状の動物医療は、さらに進化し続けています。今までは、選択の余地がなかった動物医療が選択できる医療になったことは、うれしいばかりです。助からなかった動物が助けることが可能になり、分からなかった病気も診断がつき、治療できるようになっています。

     犬や猫との出合い方

 ここ数年は、ペットブームと言われなくなり、2010年の1月から12月にかけ、JKCに登録された犬の登録頭数は昨年、142犬種439238頭だったのに対し、2010年は139犬種392958頭と大幅に減少しており、すでに飽和状態とも言われています。人気犬種は1位 プードル、2位 チワワ、3位 ダックスフンドとここ数年の人気は変わらないようです。近年人気を集めているフレンチ・ブルドッグがパピヨンを抜き、最近の人気犬種になっています。今までのように、雑種の飼育頭数が減っていますが、チワワとダックスの雑種のチワックスなどが代表されるようにペットショップでも異なる純血種の交配を行い、新しい雑種が売られています。

新しい飼主さんが見つかる動物もいれば、そうでない動物もいます。NPO法人ALIVEの調べでは、平成21年に殺処分された頭数は、全国で犬が8万4千頭、猫が20万2千頭と報告されています。この現実を受け止め、現在では、動物救済をしている方々や、自治体も増えてきています。千歳市保健所でもインターネットを通じて、子犬、子猫の里親募集をされています。詳しくは23-3175まで。またネットでの検索は千歳市保健所、もしくは下記のURL

http://www.ishikari.pref.hokkaido.lg.jp/hk/cth/contents/mayoiinunekonetto.htm まで。

 石狩振興局でも同様に道内で里親を探すネットを作成しています。詳しいことは011-204-5825まで。

 新しい犬、猫との出会いは身近にあるものです。保健所などで、新しい家族を見つけると、処分される可能性のある子の命を救えます。

また、雑種が多いので、病気に強い子が多いかもしれません。ただ、現在、病気を持っていることもあるので、その辺りは、慎重に見ることも重要です。

 お家に来たら、近くの動物病院で健康診断をしていただくことをお勧めします。家に新しくペットを入れるということは、10年以上のお付き合いになること、また、お金も少なからずかかることを考えなければなりません。

 救える命があること、また消え行く命があることを知って欲しいと思います。捨てられる犬や猫たちの家庭にもさまざまな問題があったのでしょうから。犬、猫が嫌いになったり、ファッション的に捨てた方ばかりではないでしょう。  

 本院でも、保健所から、動物管理センターなどから引き取られてきたり、ネットで里親をもらい受けたと来院される方が年々、多くなっています。飼主さんの意識もかなり変化しているのだと思い、うれしく思います。

 動物といる生活、ペットと過ごす日々がかけがえなのないものだと感じられると良いですね。