ホロコーストに関連する2作を観ましたのでまとめてアップします。
〇関心領域

◇監督脚本:ジョナサン・グレイザー 原作:マーティン・エイミス『関心領域(英語版)』 アメリカ・イギリス・ポーランド合作 2023年 アマプラで鑑賞
◇出演者:クリスティアン・フリーデル、ザンドラ・ヒュラー
◇Story:
アウシュビッツ強制収容所の所長ルドルフ・ヘス親衛隊中佐(クリスティアン・フリーデル)は家族と共に収容所の隣で平和に暮らしている。妻のヘーヴィヒ(ザンドラ・ヒュラー)が手入れを欠かさないキレイな庭の先に高い塀があり、その向こうには収容所の巨大な建物群、煙突からは人を焼いたのだろう煙が排出されているのが見える。人びとの阿鼻叫喚の叫びと時折り銃声が遠く聞こえるが、庭では妻が手入れに精を出し、子どもたちは無邪気に遊んでいる。夫は毎朝、まるで工場にでも行くように収容所へ出勤していく。
◇感想:
小鳥がさえずり、きれいな川が流れ、たくさんの花が咲いているのどかな田舎の風景。しかし壁を隔てた向こう側には地獄が広がっている。壁の外側の平和な風景は、壁の内側の地獄を想像させて地獄そのものを見るよりも却って恐ろしい。

監督のグレイザーは、ホロコーストの物語を「過去にあって現在には関係しない何か」としてではなく、「今、ここでの物語」として語ろうとした、という。
壁を目の前にしてガーデニングにいそしむヘスの妻・ヘーヴィヒの行動は極端にしても(それとても総統の意向を具現化するために自らを律している行動かも知れないが)、映画の視点は常に壁の外にあり壁の内側で行われている恐るべき状況を知りつつもヘス一家と共に平和を享受しているかのような錯覚に陥ってしまう。監督の意図は見事に実現しているのいだろうと思いますね。
〇ヒトラーのための虐殺会議

◇監督:マッティ・ゲショネック 製作総指揮:オリヴァー・ベルビン 製作会社:コンスタンティン・フィルム 配給:ZDF 2022年ドイツ Netflixで鑑賞
◇出演者:フィリップ・ホフマイヤー、ヨハネス・アルマイヤー
◇Story:
1942年ベルリンの郊外にある親衛隊の豪華な別荘にナチ高官たちが集まって、ユダヤ人をどう効率よく虐殺するかを討論していくヴァンゼー会議のさまを描いた作品。会議の議事録が残されていて、それを基に作られたそう。
親衛隊大将ハイドリヒ(フィリップ・ホフマイヤー)によって会議は招集された。全ヨーロッパに1,100万人が暮らすというユダヤ人をどうすれば効率よく「最終的解決」できるかを高官たちが鳩首して討議する。
ハイドリヒの極めて優秀な部下であるアイヒマン(ヨハネス・アルマイヤー)は会議をリード、議題は淡々と進んでいく。
◇:感想:
ヒトラーの意向である「ユダヤ人問題の最終解決」をどう実現するかを突き詰めていくと、もう数字の話しになる。総統の意向に逆らってはならないという強烈な同調圧力が発生し、参加者たちは1,100万人の「最終解決」というこの難題をどう解決するかに熱中する。ナチス崩壊後に南米に逃れ、モサドの執念の捜査により捕縛され処刑されたアイヒマンはその優秀さゆえにより良い解決策を提案していく。
歴史にはこうした悪魔に見いだされたような優等生が登場することがあるのだと思いますね。東京をはじめ日本の主要都市の空爆を指揮したカーチス・ルメイもそのひとりでしょうか。ルメイはどうすれば東京に暮らす人々を効率よく殺せるかのか、江戸時代の火事まで遡って調べ上げ、見事な悪魔的方策でひと晩で10万人を焼き殺した。
ルメイとアイヒマンの違いは何なのだろうか?そんなことを思いました。