藤沢周平「蝉しぐれ」は、少年が大人になるまでの成長物語・・・大変よかったです!! | 親愛なる人に-読書の薦め

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読んだ本の感想などを、本屋さんで見かける推薦文のように綴ります・・・お薦め度合いは、☆の数で評価します。親愛なる本好きの人たちに,このブログを届けたいです.

藤沢 周平

蝉しぐれ 文春文庫(1991年7月)470p 初出 山形新聞夕刊昭和61年7月9日~昭和62年4月11日

☆☆☆☆☆


この夏、すばらしい本に出会うことができました。藤沢周平の「蝉しぐれ」です。

主人公は少年藩士、文四郎です。彼の15歳から20歳くらいまでの成長をその友人桔平、与之助、幼なじみのふく、のみならず、藩での複雑な出来事を交えて描かれています。。。


3点ほど、印象に残った場面を記します。


あることで、文四郎はある不遇な目に遭います。彼は日々の不安を、剣の技を磨くことで、忘れようとします。このことによって、彼自身の身を助けることになります・・・確かに理不尽な、不遇なことに接すると、人はスポーツ、家庭、仕事に没頭して気を紛らわせているのではないでしょうか。


また、与之助が孔子の言葉を引用します「孔子さまは川のほとりに立って言われた。逝く者はかくのごときか、昼夜をおかずとな。夜も日もなく、物の過ぎゆく気配をさとって孔子さまは嘆じられたのだ。りょうてをあげてな。われわれのまわりもずいぶん変わった」今も昔も、青春時代は早く過ぎゆくもなのでしょうね、また、青春時代に限らず、短時間でのそれぞれの、環境の変化に人は唖然とするものなのでしょう。


もう一点だけ一部変えて引用します「あなたの御子が私の子で、私の子供があなたの御子であるような道はなかったのでしょうか」「それが出来なかったことを、生涯の悔いとしています」、この後、さらに泣けるせりふが連発されます。「蝉しぐれ」は近頃の恋愛小説が霞むような、純愛小説でもありました。


文章に趣があります。前半はゆったりと、中盤は剣のシーンが、また後半は畳みかけるように、最後は余韻を残して読み終えることができます。


読後の感想は「本当によかったです。是非一読をお薦めします!!!」



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