新曲の『響』のＭＶが早速公開された。その前半はエビ中のこれまでの歴史が目まぐるしく

映し出され、その後半には４日の武道館のステージでの最新のライブ映像が流れるという

言わば２部構成になっているが、これは過去と現在を結び付け、これから未来へと向かって

行くというメッセージが込められていると考えられる。

曲中で繰り返される「オーケストレーション(orchestration)」という言葉。意味を調べてみると、

一つには、「オーケストラで演奏する目的で作られた音楽（曲）」で、もう一つは、

「（望ましい結果を得るために）今ある状況を周到にまとめる[結集・組織化・画策・準備する]

こと」とある。つまり、この言葉には、改めてエビ中というグループをまとめ上げる、今まで

８人編成（あるいは８人以上の編成）だったものを、「６人編成」に組み換え直す、という

意図が読み取れるのだ。

公式パンフレットを読むと、各メンバーがそれぞれ何か「創造」しようという意欲に溢れている

ことがわかる。ぁぃぁぃに触発された形で何かしら自分から発信することがこれからは大事だと、現メンバーは気付いたようである。あとは、メンバー同士で話し合い自己主張するべき時はする、その方が自分のためにもグループのためにも良い、という空気が出来上がって来た（昨年の秋ツアー頃から）ようである。

エビ中は変わり続ける。それは「進化」し続けるという意味であり、その工程がまさしく

「オーケストレーション」ということなのだろう。

ところで、昨年秋、BiSHと対バンする時に、お互いのメンバー同士でいろいろ話をして、

自分のグループのメンバーの人となりを紹介する時に、美怜ちゃんがひなたのことを

「もう７、８年一緒にいるのに、私生活で何やってるのかが全く謎！」とBiSHのメンバーに

話していたことがあった。

「そうか、メンバーすら謎なのか」と思い、自分もそこに興味があって、シンコーミュージック社

から出版されている読むアイドルマガジン『IDOL AND READ #011』を購入し、巻頭の

「柏木ひなた　ロングインタビュー」を読んでみた。

「なるほど」と分かったこともあるし、依然として見えてこないところもあった。

ぁぃぁぃ曰く、「大人でも子供でもある」「しっかり者にしてやんちゃないたずらっ子」という

二面性。『ＥＶＥＲＹＴＨＩＮＧ　ＰＯＩＮＴ４』を観た時に感じた喜怒哀楽の激しさ。めちゃめちゃ

かわいいのに、かわいく見せるのが実は苦手なところ。ひなたのバックボーンとはいったい

何なのか。

まず分かったのは、ひなた自体は一人っ子だが、母親の兄（伯父）の家族と同居していて

歳の近い２人の年上のいとこ（男の子と女の子）と３人でよく遊んでいたそうである。

そして、男の子たちと一緒に遊ぶことも多く、近所の田んぼでザリガニ釣りをするのが

大好きで小４まで夢中でやっていたそうだ。もちろん女の子らしい遊びもしていたが、

小学校でスカートを穿いていったことは１回しかなかったという。

また、お母さんが厳しい人で、「小さい時から、しっかりと、厳しく育てられました（笑）」と

語っている。おかげで、人に頼ったり甘えたりする気持ちが芽生えなかったそうだ。

小学生時代は、真面目に勉強していて国語も算数もよくできたそうである。特に漢字の読み書きはいつも１００点だったらしい。

小５の時、スカウトされ、まだ芸能界には興味がないが受けてみた最初のオーディションでは

最終選考まで行って落とされたが、それが本当に悔しかった（負けず嫌いなので）ため、

「絶対に歌って踊る人になってやる」という気持ちで、スターダストにスカウトされて見事

合格し、その後のひなたがある。

「悩み」というものがどういうもので、「悩む」ということがどういう状態なのかわからなかったと

いうくらい順風満帆だったひなたにとって、やはり一番の人生の試練は、例の「突発性難聴」

という病気であった。しかしそこで一人で悩んだりせず、誰かに頼ったり甘えてもいいんだと

いうことを身をもって学べたのはケガの功名と言うべきだろう。

生来の真面目さと負けず嫌い。病魔との闘いと葛藤。歌って踊ることがとにかく好きなこと。

好きなもの・好きなことはとにかくブレないこと。それ以外では割と無頓着なところ。

無邪気にとことんまで遊べるところ。「かわいい」よりも「カッコいい」を目指しているところ。

自分のことよりも周りの人のことを優先してしまうこと。これらがひなたのバックボーンと

言えそうなところである。

ひなたが初めてエビ中と出会った時、身長は１３６ｃｍで、美怜ちゃんから「ちっちゃいね！」と

言われたそうだが、今は１５６ｃｍまで背が伸びた。この２０センチの中に、ひなたのエビ中と

しての栄光や挫折、喜びや悲しみ、夢や野望や現実との葛藤、強さと弱さ、未来への希望、

仲間への信頼、責任と重圧、愛情と自信と誇りが、混在している。

とても分かりやすくもあるし、逆にそこが謎にも見える。本当いそがしい人よね。

柏木ひなた・２００ミリの軌跡