【本】今日の一冊…吉岡忍『M/世界の、憂鬱な先端』 | クズレコハンター下手のパンダはただ今授業中~ロックと映画とアイドルと…~

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Finolia Girlsの皆(特にSurvive-ZERO)、元SDN48の野呂佳代さん、AKB48チームK卒業生今井優さんを応援し、チームBの片山陽加さんも応援している日本語教師が仕事や趣味について語るブログ。


こんばん優☆ & こんばんポノック♪




通勤電車の中でチビチビ読み進め、先日やっと読み終わった一冊。


タイトルのMとは、もちろんあのM氏のこと。

そのMと、後に少年Aが引き起こした2つの事件を通して、20世紀の
終盤の日本を見つめ直すといった内容(初版は2000年の12月に発表)。



実はこの本、何年か前に手に入れて読み始めたはいいものの、冒頭のドイツでの
エピソードがあまりにも長くて挫折。それから放りっぱなしになっていました。

ある日、ふと本棚に眠る本書を目にし、せっかくだからもう
一度チャレンジしてみるかと思って、今回はなんとか完読。


冒頭だけでなく途中にも『これ必要?』と思ってしまう
ところが何ヵ所かあり、読むのはけっこう大変でした。

その全てはラストに帰結するので、決して無駄ではなく意味があるんですけど。



この本の興味深いところは、なぜMや少年Aがこんなことをしたのかという内面的な原因だけではなく、
なぜ彼らのような人間が出来上がってしまうのかといった、外側の原因の部分まで踏み込んでいること。


これは(あくまでも本書によれば)今から変えようとしても変えられない現実に根付いたもの。

ならばそれを乗り越えたり防ぐためにはどうすればいいのかという一応の提案に
まで辿り着いていて、そこまで読み進めると思わずうーむと唸らされてしまう。


見て見ぬふりではいけないというか、結局は人間なんだな、と…

人間と人間が関わることでしか何かを変えることは出来ないんだなと。



本書の大半はMについて割かれていて、少年Aについては後半で少し触れられている程度。

その代わりMについては供述調書や精神鑑定での発言を中心に、かなり突っ込んで触れられている。


何故Mがあのような犯行に及んだのかという点については、本人の発言を読んでも理解し難い。

ただ、そこへ行き着くまでの生い立ちや経緯などを読んでいると、ハッとする箇所がなくもない。



例えば、ビデオマニアだったMが言うところの、ビデオをダビングしている時の『甘い感覚』。

自分も昔ハードディスクに録画した番組を編集してビデオにダビングしていた時期があって、
ダビングしている間には、コレクションが増えるような『甘い感覚』を感じていたものです。


ビデオに限らずヲタであれば誰しも、好きなモノに囲まれていたり好きなモノのことを
考えている時に、現実から隔離されるような『甘い感覚』を感じる瞬間があるのでは。



ただ彼の場合その『甘い感覚』の中にいる時こそが現実で、外の世界に生きている
時に現実を感じることが出来なかったのが最大の問題だったんじゃないかと思う。


今さら何を言ってもムダなことは承知の上で言わせてもらえば、何でもいいから彼の
横っ面をひっぱたいて、現実に目覚めさせる出来事があったなら…と思ってしまう。

音楽でも映画でも、本でも友人でも本当に何でもいいから。



自分の場合は、やっぱり10代の頃に出会ったパンクロックかなぁ。

それから仕事を辞めて渡英したことも大きかった。あれで随分いろんなことに気付かされたし。


あの時もし前の仕事を辞めてなかったらと思うとゾッとする。
今頃アタマおかしくなって何しでかしてたか分かりゃしない。



『おたく』から『オタク』を経て『ヲタク』へ、やがて
『ヲタ』になり、世間での受け止められ方も変わった。

でもこの事件は未だに様々な教訓を遺していると思う。ある意味この事件で目が覚めた人もいるはず。


シンジ君じゃないけど逃げちゃダメなのです、やっぱり。

では、今日はこの辺でおやすミサティ★