【本】成人の日の前日に『二十歳の原点』について考える | クズレコハンター下手のパンダはただ今授業中~ロックと映画とアイドルと…~

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こんばん優☆ & こんばんポノック♪




今朝、TOKYO FMで作家の小川洋子さんが『二十歳の原点』
について語る番組を放送するというので聞いてみました。


番組の感想は置いといて…

『二十歳の原点』とは、1969年6月24日に自殺した大学生、高野悦子さんの日記を書籍化したもの。


高野悦子さんの死後に同人誌に発表されたものを、1971年に正式
に書籍化して以来、未だに多くの読者に読まれているそうです。

ちなみに映画化もされています。自分は未見ですがサントラ盤CDだけは持っています。



自分がこの本を初めて読んだのは19歳か20歳の頃。

「暗いから読まない方がいい」と友人に言われてなおさら読みたくなり読んでみました。


…が、正直に言うと当時はよく分かりませんでした。



元々日記というものは、読者を想定して書かれたものでは
ない“究極の一人よがり文学”と言っていいと思います。

ですから、書き手にとっては感情の動きなどが一本の糸として繋がっていると
しても、それを読み手が理解するにはある程度の“読み”が必要になります。


最初に読んだ時はそこまで考えられなかったんですよね…

ところが、歳を経て繰り返し読んでみると、文章の向こう側から高野悦子さんがどんな人
だったのか、どんな気持ちで日記を書いていたのか等、いろいろなことが見えてきます。



他者との繋がりを強く求めながらも、他者に過剰な期待を抱いて
しまうのか、どうしても上手に人間関係を保つことが出来ない。


また自分に正直になればなるほど周囲との距離感が増すばかり。

そしてその気持ちがますます日記を書くことに向かわせてしまい、どんどん自分を追い込んでしまう。


やがて誰もが、自分自身すら信じられなくなり、結果的に
はそれが彼女を“死”に向かわせてしまうわけですが…。



まあ…確かに“暗い本”ですね。“明るい本”ではありません。

しかし読み手はきっとこの本の中に“もう一人の自分”を投影するんじゃないでしょうか。


人間誰しも表面は明るく取り繕っていても、その奥底には
誰にも見せられない、本当の自分がいるのだと思います。

カッコ悪くて不器用な自分が…。


そういった部分を正直にさらけ出しているからこそ深く考えさせられるし、
だからこそこれ程までに長く読まれているんじゃないかと思うんですよね。



ただ、同じように自殺した漫画家、山田花子の日記を書籍化した『自殺直前
日記』を読んでいても思うのですが、自分に正直になり過ぎて、それが最後
には自分を追い込むことになってしまうのはあまりにも悲しいことではと。


例えばその気持ちを何かしら表現活動のバネにすることも出来るのではないかとも思うのですが…

まあそれを言ったら山田花子は漫画家だったし、イアン・カーティスやカート
・コバーンの例もありますから、一概にそうとも言い切れないんですけど…。


人間やっぱり、モリッシーぐらいのしたたかさがないとダメなのかなぁ…。



ただ、それでもふとした瞬間に『二十歳の原点』を読みたくなることがあります。

そして『不器用でもいいから、やっぱり自分自身に正直に生きなきゃ』と強く思わされます。


若い読者はこの本を読んでどう感じるんでしょうね…昔の
自分のようになかなか理解出来なかったりするのかなあ。

ま、成人式に酒飲んでやってきて、係りの人と乱闘起こすような若者には読んで欲しくないけどさ。



最後に…

実はこの『二十歳の原点』、出版順序は逆になりますが、中学時代から高校
時代の日記をまとめた『二十歳の原点ノート』、高校時代から大学時代の
日記をまとめた『二十歳の原点序章』と、前編に当たる本が二冊あります。


三冊通して読むと、高野悦子さんの人柄などが更に深く理解出来ると思います。

意外と可愛い一面があったりもして…。


60年代末期の混沌とした空気もリアルに伝わってくるので、興味のある方はぜひ読んでみてください。