人の「健康」を形作るのは、食事であると言っても過言ではない。食事は人の細胞を生成し、エネルギーを生み出し、生命維持活動を支えている。それだけでなく、栄養素不足はイライラや集中力散漫を引き起こす原因にもなるため、メンタルにも大きな影響を与えていると言える。そのことから、人生は食事によって左右されるという見方もできる。

よって、人が健康的な身体と精神を保つためには、栄養バランスの取れた食事が欠かせないのだ。それ以外にも、食事を通して生活リズムや四季を感じることもできる。そして美味しい食材は、五感に喜びを与えてくれるものであり、生活のひと時を彩ってくれる。それは介護の現場においても、同様のことが言える。ベッドの上で過ごすことが多い利用者にとっては、食事の時間は一日のうちで最も待ち遠しい時間になり得るのだ。

介護現場では、食事はエネルギー補給や生きる楽しみという役割以外に、大切な役割を担っている。その一つとして言えるのが、脳への刺激だ。食事は五感をはじめ、咀嚼機能への刺激を与えることができる。こうした刺激は脳にとっても重要であり、咀嚼をすることで顎の筋肉の衰えも防ぐことができる。

もう一つが、健康のバロメーターになることだ。食事をうまく飲み込めているかどうか、また食事の量が違う場合も体調不良の目安となるため、早い段階で異変に気付くことができる。

そんな重要な意味を持つ食事だが、味覚の衰えや飲み込む力の低下などの影響で利用者自身の食欲が無くなるケースもある。そんな時は、食事の意欲を上げる工夫が必要になってくる。彩り良く盛り付けて美味しそうに見せたり、食材を細かく切ったり柔らかくして噛みやすくしたりして、少しでも食に興味を持ってもらうようサポートすることが大切だ。

介護業務におけるサポートにおいて、食事介助は非常な重要な仕事である。というのも、利用者にとって食事はエネルギーを摂取するだけの行為ではないからだ。「美味しいものを食べることが生きがいだ」という人がいるように、一日の中で一番食事を楽しみにしている利用者は多くいる。

また、一日の大半をベッドの上で過ごさねばならない寝たきりの高齢者にとっては、食事は時間の流れや四季を感じる大事な手段となる。このような人々にとって、食事はエネルギー摂取以上の重要な意味を持つのだ。

自分で食事をするのが難しい人に対し、美味しく食べられるサポートをするのが食事介助である。そんな食事介助において大切なのは、利用者の体調や状態に合わせて食事を提供することである。

例えば、胃腸の調子が悪いのであれば消化に良い料理を選択したり、量を減らしたりする、利用者が咀嚼できる硬さにする、といった形に、相手が無理なく食事できるよう工夫する必要があるのだ。また、食事中に口の中が乾いていると嚥下しにくいため、こまめに飲み物を飲んでもらうことも大切だ。

そして、食事を楽しめる環境作りにも気を配らねばならない。音楽を流したりするのはもちろん、食べることを強要しないよう心がけるべきだ。基本的に食事の時間は決まっているが、「食べたくない」と主張している時は少し時間を置くなど、利用者のペースに寄り添うようにしよう。

とにかく食事介助では「相手に合わせる」という意識が非常に大切なのだ。食事介助の正しい手順をはじめ、高齢者の食に関する問題等を取り上げた有益なサイトを見つけたため共有しておく→(高齢者の食事事情~安全な食事介助のために~)