11月もそろそろ終わり、本格的な冬がもうすぐそこまでやってきている感じがします。
私が所用から今滞在している長野上高地のペンションの方ではちらほらとすでに雪が舞い始めています。
雪が降ると今まで見ていた辺りの風景が一変しますよね。
子供の頃にも朝起きて窓から見える風景が銀世界に一変していると一様に気分が良くなったものです。
先日読見終えた「極北」という小説も
そんな白銀の世界を舞台した重厚な作品でした。
⬜︎極北(FAR NORTH)作者:マーセルセロー 翻訳:村上春樹/2012年/アメリカ
極北/マーセル・セロー

¥2,052
Amazon.co.jp
舞台は極寒の地、近未来の北半球のシベリアであると推測します。
推測しますというのもこの小説、はっきりとした場所や時代設定というものが細かく語られません。
読後の感想としては非常に重厚感があり、かつ意外性に本当に飛んでいる小説だなぁと思いました。
というのもストーリーの展開が読めない部分がほとんどだからです。
(マーセルさん)

通常ですと「こういう展開の後にはこうくるな」とかそう言ったいわゆる「テッパン」的な部分に物語が引っ張られていってしまうところがあると思うのですが、
この作品に関して言えばそう言った「テッパン」なところに引っ張られずに、物語がどんどん二転三転していきます。
そう言った部分が子の作品の大きな魅了であり、この作品の持つ「小説世界」というものに大きく寄与していると思いました。
と、喋っておいて一体どんな作品なのか?多少なりともあらすじを記載しないと全くなんのこっちゃと思われると思いますので、少しばかりあらすじをかいつまんでおきます。
◯ストーリー
そう遠くない近未来の世界。極寒の地シベリア。幼い頃よりそこで育ち生きている主人公、「メイクピース」。
しかし彼女に家族は既になく、街には彼女一人しか残っていない。
完全なゴーストタウンとなった街でたった一人、様々なサバイバル術を駆使し生き、日々誰もいなくなった街の警察官として巡回に精を出す。
ある時、街の巡回の途中で「ピング」という若くして身ごもっている中国人の少女と出会う。
たった一人今まで極限の孤独の中生きていきたメイクピースにとって彼女との出会いは大きく、人生に大きな希望を見出してくれるものだった‥
しかし、ピングは死に絶え。またたった一人極北の取り残されたメイクピースはショックのあまり、自らの命を絶とうとするも未遂に終わる。
と、その時。一機の飛行機の姿を捉える。ありえないその存在に魅かれ追跡するも、飛行機は墜落した後。
生存者もなくどこから来たかもわからない。しかし確かに「誰か」がその飛行機を飛ばした。
彼女は新たな希望を抱き、飛行機のやってきた場所を求めて旅をする決意をする。
◯作品について
このようにしてあらすじだけ追ってみると、よくありがちな近未来小説に思えるのだが、この小説の重要性は先述した通り、先の読めないように組まれたストーリー構成にあると思う。
この後主人公のメイクピースは旅を続けるわけだが、そこで主人公は旅をできる状況じゃなくなって行き、どんどんと転落していく。
「旅をせずにその場に留まっていたらどれほどマシだっただろうか?」と読んでいる側は何度もそう思ってしまうぐらいに。
また、この小説は「3.11」を体験した我々日本人にとっても決して無関係なように感じない。
決してこれがあくまでもフィクションとは思わせてくれないような内容を含んでいるからだ。
そこに関しては読んでいただければお分かり頂けるとおもいます。
(しかし、あくまでもこの小説はアメリカでは2009年に発行されたものであり、震災の前となります。)
ただ、翻訳に関しては村上春樹と云うこともあり、少々読んでいてわかりづらいところや、言い回しが難解だなと感じられる部分もありました。決してスラスラ読み進められる作品ではないとおもいます。
作品の持つ重量感やキレの良さ。稀有な意外性を多分に含んだこの作品。
そして読後に残る物語の圧倒的な白銀の小説世界。
冬は寒いですが考え事をするには適した良い季節です。
暖かい部屋でゆっくりとこの冬読まれることをお勧めします。

