私が債務整理の相談のために、妻と娘を連れアディーレに行ったのは、電話で相談をした次の日曜日でした。
場所は西新宿、JRの新宿駅から都庁に向かう途中のビルでした。
某専門学校の特徴的なビルの隣の高層ビルにアディーレのオフィスはありました。
「キッズスペースが有るらしいよ」
事前にネットでアディーレの西新宿の事務所をチェックしていた妻は言いました。
「それだったら長時間話をしていても大丈夫かもね」
娘が着いてきていて、普段ですと1時間位すると娘が飽きてしまうのですが、今日は内容が内容だけに、依頼することとなれば何時間でも居なければなりません。
サラリーマンの私には、任意整理しか無いんだろうな、というだいたいの方向性は見えているので、若干は気が楽でした。
その不安を拭い去ってくれたのは、アディーレではなく、サンク総合法律事務所のW氏のお陰です。
W氏が真夜中にも関わらず、懇切丁寧に説明してくれたおかげで、私の場合は任意整理で復活出来る!!と云う希望を持つことができました。何年掛かるか判りませんが、住宅ローンを組んで家を持つことも出来るかもしれません。
アディーレにしか相談しておらず、アディーレに頼むしかないのであれば、結構不安ガチガチな感じかもしれませんが、いざとなれば翌日月曜日に訪問予定のサンク総合法律事務所に頼めば良いや、という気持ちでいたので、多少リラックスする事が出来ました。
あとは、こういう債務整理案件は弁護士事務所にとってもある程度手が掛からない話のはずなので、こちらの意向を最大限汲んでくれて、任意整理で進めてくれるのではないか、と思っていました。
アディーレとサンク総合法律事務所で進めるのどっちが良いんだろうな?と新宿駅に向かう山手線の車中でふと思いました。
電話で懇切丁寧に説明してくれたのは、サンク総合法律事務所です。でも取扱実績や弁護士事務所としての規模は圧倒的にアディーレでした。
また、債権者1件当たりの手数料はサンク総合法律事務所が6万円(+消費税)なのに対し、アディーレは5万円と1万円も安くなっています。
私の場合、銀行・カード併せて11社から借りていたので、手数料だけで11万円変わってきます。
心情的にはサンク総合法律事務所なんだけどな、、、
あと、アディーレにはもう一つ懸念点が有りました。
まあ懸念というほどの事もないのですが、過払金請求が流行っていた数年前、CMをガンガン流していたアディーレは実際価格変更は行わないにも関わらず、「キャンペーン割引終了まであと〇〇日」と称して割引期間があと少しで終わる、という様な印象を与えた、として罰せられた、という記事を読んだ記憶が有りました。
過去の過払金請求の話ですし、私が支払うこととなる手数料はそのキャンペーン割引とやらは付いていないので、何の関係も無いのですが、その様な何も知らない消費者を騙すような会社は、たいてい他にも良くないことを行っているケースが多い、というのが私の印象でした。
まあ私が債務整理をお願いする3年間程度は持ってくれるでしょうが、依頼して手数料は取られたにも関わらず、その弁護士事務所が倒産してしまった、というのは嫌だな、と思っていました。
色々考えている間に新宿駅に着きました。
約束の10分前。
事務所までの時間を考えるとぎりぎりです。
JRの改札を出て都庁に向かいます。
5分ほど歩いた所で、ビルの入り口に辿り着きました。
ああ、ここか。
それ程有名ではないビルですが、見覚えが有ったのは、2年前に転職活動したときに、志望した会社の1社が近くに有ったので、そのビルの地下1階に入っている喫茶店で履歴書を書いた記憶が有ったからです。
転職活動をしていたあの時はまだ借金がそこまで膨らんで無かったな、確か8百万円位だったでしょうか。
今はその1.5倍の借金を抱えています。
そんな思いが頭をかすめましたが、もうアポの時間まで5分ほどしかないので、急いでエスカレーターを上がります。
アディーレは3階に有ったので、1階で3階に登るエレベーターを探します。
休日なので人もまばら。
3階で降りると、そこにはきれいな入り口が、、、有るわけではなく、どこから入ればアディーレに着くのか判りません。
エレベータの横のマップで、エレベータを降りて左奥に有ることを発見しました。
左奥に向かうと、「アディーレ法律事務所」と書かれた事務所の入り口が有り、受付のドアホンが置いてありました。
指定された内線番号を押し、電話に出た女性に15時から予約の旨を告げると、しばらくお待ち下さいと告げられました。
待つこと1分ほど。
背の高い細身の女性が出てきて、部屋に通されました。
通された部屋には、レゴの様なおもちゃの車が1台、窓際に置いて有りました。
これがキッズスペース?おもちゃの車が1台置いてあるだけだけど。
とは言え、本題は債務整理。娘には我慢して貰うしかないので、「車で遊んでて」と言い、妻と私は椅子に掛けます。
部屋に私達を通してくれた女性が、紙を1枚持ってきて、
「お判りになる範囲で結構ですので、記載して下さい」
と言いました。
紙の内容は、名前・住所・勤務先・年収など。
書き終えたので、その旨を女性に告げた所、インタビューが始まりました。
インタビューの内容は、先日の夜の電話で私が告げた私の債務全容の確認です。
私は自分の債務一覧をプリントアウトして持ってきていたので、
「こちらを見て下さい」
と渡しました。
そこで初めて女性の顔を直視したのですが、お化粧が結構インパクト有るなと思いました。
私は女性のお化粧にさほど興味は有りませんが、なんというか、化粧のトーンが暗いのです。
アイシャドウが濃すぎるというのか、全体的に目の回りが暗くなっているので、顔全体の雰囲気が暗く見えてしまっています。
営業向きではないな、と勝手な事を思いながら、女性が私のプリントアウトと電話で告げた債務の全容を記した紙の内容に齟齬が無いか確認している様子。
その後、幾つか質問されました。
「このカードの借入の内容は何ですか」
「だいたいは生活費です。リボで膨らみました」
「このカードの借入は?」
「副業で挽回しようと思って情報教材を幾つか買いました」
「自分名義の口座を他者に売却したりしてないですよね」
「してません」
「誰か事業を営んでいる方の保証人になって肩代わりした借金は有りませんか?」
「有りません」
借入の内容は予め妻に説明してあったので、良かったと思いました。
口座を他者に売却していたりすると、その時点で任意整理等は申請出来ないらしいことは後から知りました。
また、他人の債務を肩代わりしていても、任意整理は申請出来ないことも後から知りました。
次は我々の生活費について質問されました。
私の手取りは50万円程度。妻の手取りが20万程度で、そこから家賃が引かれ、娘の養育費が引かれ、食費が引かれ、と説明していきます。
返済にどれ位充当できるのか計算しているんだな、と当たりが着きました。
生活費に関するインタビューが終わった後、アディーレが作ったと思われるピンク色の小冊子を女性が取り出して来て、任意整理と個人再生、自己破産の違いについて簡単に説明してくれました。
「私としては任意整理を申請したいのですが、どうお考えでしょうか?」
「私は事務員ですので、後ほど弁護士がご説明させていただきます。」
またその返しか、じゃあ弁護士をさっさと出してよ、と言いたくなるのを堪え、
「判りました」とだけ答えました。
「では、弁護士に今お伺いした内容をざっと説明して参ります。弁護士が後ほど似たような質問をするかもしれませんが、お気を悪くなさらないで下さい」と言われ、女性が退出しました。
「あの女性、結構化粧にインパクト有るよね。少なくとも明るい雰囲気にはならないな」
と私が妻に言うと、
「こういう事務所だから明るくする必要はないんじゃない。逆に派手すぎても相談者に違和感感じられるだけじゃないかしら」
うーん、ごもっとも。
待つこと5分ほどして先程の女性と若い男性が入ってきました。
「初めまして、弁護士で所長の○○です。」と名刺を渡されました。
若いなあ。年は30は行っていない感じでしょうか。
肌艶も良い若い男性です。私の会社の新人の子の方が貫禄有るくらい。
名刺には登録番号の入った「弁護士」の肩書と胸に弁護士バッジはしていました。
任せて良いのか?というのが率直な感想でしたが、なるべく表情に出ない様に、
「私としては任意整理を申請したいのですが、どうお考えでしょうか?」
と気になる質問をぶつけてみました。
「債務額が少し大きいのが気になりますが、年収も相応に有られますし、大丈夫です。100%任意整理で行けると思います。」
ちょっと安心しました。
横から妻が聞きました。
「私はまだ夫がこんな借金を抱えた事を信じられないんですけど、最近はこういう相談は多いのですか?」
「多いです。特にリボ払いが出て来てからは」
妻が頷きました。妻はまだ私がどうしてこんなに大きな借金を抱えたのか、疑問を持っていたので、今の弁護士の一言はありがたかったです。
それから、先程の冊子で任意整理の流れを説明され、だいたい5年で返済が終わる旨の説明を受けました。
「任意整理が終わってから数年するとブラックリストから外れて、住宅ローンも組めるという話を聞いたのですが」
と私が聞くと、
「私は金融機関に居るわけではないので、断言は出来ませんが、だいたい3年から5年でブラックリストは外れると言われています。」
隣に座っている妻の表情が少し明るくなった気がしました。
その後、アディーレは任意整理の手続きの進捗についてメールや電話で連絡を行うことは殆どなく、「アディーレオンライン」というオンラインサイトで進捗管理が出来る旨説明をしてくれました。
「では、我々は一旦退出しますので、ご家族でご相談下さい」
と弁護士と事務の女性が退出しました。
「どうしようか?ちょっと弁護士が若いのが気になるんだよね。」と私。
「若くても経験有れば良いんじゃないの?100%大丈夫って自信有りそうだったじゃん。肩書も所長だよ」と妻。
「多分、弁護士も余ってるから職にあぶれてこういう事務所に来たんだよ。弁護士なら誰でも所長になれる感じじゃないかな」とこの期に及んで上から目線の私。
結局、二人で相談して結論が出たので、内線で先程の事務の女性を呼びました。
さて、私達の結論は?
それは次回で。