ONLY WAY IS UP ⬆︎⬆︎⬆︎

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鬱で仕事辞めました。

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ざばばーん!!ざばばーん!!
ピキャンゴロゴロ!!!
轟く雷鳴と巨大な怪物の様な波に藤一の乗る船は転覆寸前であった。
藤一は後悔していた…。巳之吉を泥の船に乗せて沖まで誘い出した。泥の船は藤一の思惑通り沖で沈んだ。
沖から魚を捕り、帰る途中で凄まじい嵐にぶつかった…
この嵐に泥の船が耐えられるはずもなく、泥の船は見事に沈んだ。
沈み出す船の中で巳之吉は溺れながらも必死の形相で「助けてくれ!!」と懇願した。
しかし、藤一は助けなかった…艪で何度も…何度も巳之吉の頭を打った…
バシンッ!!バシンッ!!
巳之吉の頭を打つたび巳之吉の動きは徐々に少なくなり、深い海の中へと沈んで行った…。
そもそも、藤一は巳之吉を殺すつもりなど毛ほどもなかった…。ちょいと頭を使って懲らしめて、人を化かす事を得意とする狸を出し抜けたらさぞ楽しかろうと、軽い気持ちで老夫婦達の頼みを聞いた。
なにやら嫗が死んだとかどうとか言っていたが、根っからの遊び人である藤一にはどうでもよかったのだ。
しかし、この巳之吉という狸、全く狸らしくなかった…こちらの言葉を信用して、肥溜めに落ちた時など「お前でなくてよかった、その白い毛が台無しになる。俺はこの通り狸だからな、毛が茶色いから川で一浴びすれば問題ない」と言い出す始末だった。
藤一はこの巳之吉の性格が気に食わなかった…
藤一の悪戯が過ぎたものになるのにそう時間はかからなかった。なぜなら藤一が巳之吉に悪戯をするたびに、翁は美味い飯を食わせてくれた。やがて翁は「もしあの糞狸を殺してくれたならば、儂がお前さんたちにこれからずっと飯をくわしてやるぞ?どうじゃ?お前さんにも家族がおるじゃろう?皆んなまとめて儂が面倒見てやる。ただし、あの糞狸を殺すのじゃ」
藤一はこの一言で変わった。
藤一は兎だ、常に他の動物達に狙われ、怯えながら生活しなければならない。藤一には8人の子供がおりとてもではないが養うのは楽ではない。
もし、巳之吉を殺して家族全員でこの翁の元で暮らせば一生安泰だ。
藤一はそうして巳之吉を殺すことに決めたのだった…。
何とか船を操作し、岸にたどり着いた。
すると未だかつてない大きな波が船を直撃し、船は木っ端微塵となり海に消えた…
まるで船を…藤一が犯した罪を船ごと飲み込むように…
つづく