私は放任主義の両親の元育ったが
昔から、『自分のことを傷つけることをしないでほしい』と口酸っぱく言われていた。

昔一度だけ特に悩みもないのにリストカットをしたことがある、
その時はひどく怒られた。

それからなるべく自分のことを大切にしてきたつもりだ。

だがそれもただの思い込みで
実際にはもう取り返しのつかない程

私は傷ついていた、
私は私自身を傷み付けていた。

一度傷ついたものは元には戻らない、
時間が経てば傷は癒える、

先人達はみな“傷”に対して色々なコメントを残しているが
私はどれもしっくり来なかった。

この傷は癒えることがない、というのも大それた話だし
時間が経てば、と言うが時は残酷で
決して私のことを待ってなどくれない。

今こうしている間にも刻一刻と時間は過ぎていく、

水を飲んで布団の上に転がる
目を瞑ると余計な情報が遮断され
自分のナカの音が聞こえる。

そして音と共に飲んだ水がゆっくりと体に吸収される、
生きてる、

私は今生きてる。

生きてる。

自分を傷つけることが怖くて
食べることをやめた。
飲むことをやめた。

とにかく自分を守りたかった。

でも守れなかった。

今日も裂けた


お尻が裂けた。

ウミガメは出産をする時あまりの痛みに耐えきれず涙を流すらしい。

私も例外ではない。

『お手洗いに行きます』

颯爽と職場を出ていく私

帰ってくる頃には上向きに上がったまつ毛は涙で下がり、アイシャドウのラメは飛び、
とても美しいと言える姿ではなくなってしまう。

私は血の滲むような努力をしたつもりだが
自分の傷を癒すことはできなかった。

滲んでいたのは私の目元のマスカラだけだった。