網走で投宿した我々は、近くのジンギスカン屋で夕飯を済ませ、部屋でいいだけ酒を飲み菓子を食い荒らした。


大部屋に一面敷かれた布団の上に寝っ転がれば、そこから起き上がることなんて到底できない。


北海道に上陸して以来初めて狭い車中から解放され、我々はすっかりのんびりムードに包まれていた。


ただ1人を除いて…





「西女満別の撮影地行ってきますわ」



日比谷さんは真剣な眼差しで、寝転ぶ僕らを見つめた。


彼は次の瞬間にはストーブに温められた部屋に背を向けて、車を始動させていた。


宿を出た彼がいつ戻ってくるのか、どういうつもりなのか誰にも分からなかった。


残された5人は順番に入浴し布団に入った。翌朝の起床時間を6時半頃と定め、消灯した。

深夜3時のことだった。





…翌朝、目覚ましの何倍も凄まじい喧騒で目が覚めた。青島(チンタオ)君やてめぇの会話を聞くと、どうも現在時刻6時前後らしい。


ああ、まだ目を開ける必要ないな、現在時刻を悟った僕は再び寝ようとした。


しかしだれかが布団越しに僕を襲った。


「起きてください」


低い声で呼びかけられた。西女満別から帰還した、日比谷さんだ。


当然、自分のスマホの目覚ましが鳴るまで起きる気などない。


隣ではてめぇが「おかしいって…日比谷さん電車すぎるよ」と嘆いている。

日比谷さんに起こされてしまったらしい。


これはいかん、きっと次は僕がターゲットだ。即座に僕は布団を深く被り、「俺は起きないぞ」と宣言した。



布団の外は戦場だ。聞くに絶えない断末魔が薄暗い網走に響き渡る。


僕の防空壕は意外にも最後まで残った。しかしてめぇの「くまさんマジで起きないつもりだ」の一言を皮切りに、制裁が下された。


布団を身ぐるみ剥がされ、スウェット1枚にされた。追い剥ぎだ。完全に。


ふと携帯を見ると時刻は6:20を指している。…やっぱりまだ寝ていい時間じゃないか。

隣の布団をパクって再び就寝した。


追い剥ぎが怖かったが、2度目はなかった。

気づけば6時45分。満を持して起き上がると、自分以外はほとんど準備完了の状態だった。


自分の遅すぎる起床を正当性を主張するため、下半身を布団に埋めたままこう述べた。


「俺もう出れるよ」



「んなわけねえだろ」

「寝ぼけすぎ」


非難轟々だった。



宿の女将さんに見送られ、西女満別のストレートへ向かった。


激パを想像していたが、意外と平和だった。

ただ、高さが足りなかったので雪で土台を建設し、その上に構えた。

無事通過。


追走開始!


金華(信)-生田原

安国-遠軽



遠軽〜当麻の間はグレーな所ばかりのため割愛。

合法のところでは失敗しましたよ?



当麻駅


東旭川-南永山


ここでおしまい。


このあと風呂へ向かったら駐車場でスタックし、脱出や他車の救出に2時間以上かかったのは秘密。


おわり。