寂れた町…
いや
それほどでもない場末の酒場。
カウンターと言うには
少し格好つけ過ぎる居酒屋の奥に
ひとりの女がいる
美人とは言えないが
時折
淋しそうな表情が
俺は気になった…
麦のロックを片手に
髪をかきあげる時
わずかに見える白いうなじが
魅力的だった…
「なっちゃん…あまり飲み過ぎんさんな……」
と
少し高い位置から覗く
店のオヤジさんが声をかける
(なっちゃん…て言うのか…)
女は無言で微笑みながら
グラスを差し出した
「あ~あ…そこそこにしんさいねぇ…」
オヤジさんは眉間にシワを寄せながら
まだ溶けるまでに
時を感じない氷がいるグラスに
麦焼酎を注いだ。
小さな声で
「ありがとう…」と
女は言った
彼女の声を
初めて耳にした
どこか幸の薄い…………
広島の夜
俺は心に話かけていた夜…
つづく…
