そして恋が降ってきた【前編】

<第六十一章>淡い予感 その2

 

 

終電の前にトモコと健太を帰らせ、タカヒトも帰ると

店には博之と、翔とカナの三人になった。

 

「タカヒト君は、みきさんと自分に

トモコさんとトオルくんを重ねて、辛かったんだろうな。」

と、翔は言った。

「情熱的だからな。同じ事をされたら、自殺しかねない。」

 

「言えてる。」

カナが同意した。

 

「三日会えないだけで、死にそうな顔してるんだもん。」

くすりと笑った。

「会社でも、こっちが恥ずかしくなるくらい

ベタベタしてて有名なの、あの二人。」

カナが続けた。

「まあ、ベタベタしてるのは

タカヒトが一方的に、だけどね。」

 

「だろうな。」

翔が笑った。

 

「なんだか羨ましいですね。」

博之がボソッと呟くと、

二人は彼をじっと見つめた。

 

「マスター、今度はしくじらないように。」

意味深な顔で翔が言うと、

博之の顔が赤くなった。

 

「トモコさんとマスター、似合ってるから自信持って!」

カナも追い討ちをかけるように、言う。

 

「まいったな。」

と、彼は小さい声で呟いた。

 

“見透かされている。”

でも、悪い気はしなかった。

 

 

 

 

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