そして恋が降ってきた【前編】
<第六十章>淡い予感
羨ましいくらい真っ直ぐな、
タカヒトの言葉が、トモコの胸を貫いて
彼女の顔が蒼白になった。
「今度好きになった人には、ちゃんと頼って甘えてください。
じゃないと、健太くんが不憫すぎます。」
“今度誰かを好きになったとき”
そんな時が自分に訪れるのだろうか?と、
彼女は思っていた。
パパさんに愛されていた事も、分かったけれど
彼女はそもそも、自分から誰かを好きになった事は無い。
そこまで考えて黙っていると
博之が二人に飲み物を運んできた。
タカヒトにはスプモーニ、
トモコにはミルク多目のカフェオレだ。
「これは、サービスです。
話が白熱してるから、のどが渇いたでしょう?」
そう言って、タカヒトを見た。
「うるさくして、すみません。」
彼が謝ると、博之は微笑んでからトモコを見た。
「これでも飲んで、落ち着いて。」
優しい目だった。
トモコの事を思いやる気持ちが
表情に出ている。
彼女の胸が高鳴った。
「・・・・ありがとう、ございます。」
見つめ合う二人を、タカヒトが見守る。
“トモコさんの春も、近いかもな。”
と、彼は思っていた。