灼熱☆バケーション【後編】 

〈第二十八章〉 目覚め その2

 

 

カナが悪い夢から目覚めると、

心配そうな翔と、ひろこ先輩の顔が見えた。

冷たいタオルを当てられているのが分かる。

気持ちよかった。

 

ひろこ先輩の顔を見ると

罪悪感でたまらない気持ちになる。

 

「ひろこ先輩、ごめんなさい・・・・。」

謝ると、涙があふれてきた。

 

「大丈夫よ。起きてたし。気にしないで。」

と、優しく言われて背中をさすられた。

 

その手が暖かい。

 

翔がカナに口移しで水を飲ませると

気分が少し良くなった。

 

ひろこ先輩が戻ると

翔と二人きりになる。

カナは後ろめたくて、翔の顔が直視できなかった。

 

「もっと水飲む?」

彼に聞かれて頷くと、

また口移しで飲ませてくれた。

 

「カナちゃんごめんな。無理させて。」

と、翔に謝られて初めて、

自分が熱を出していることに気付いた。

だから、夜中にひろこ先輩を呼び出していたのだと

ようやく気付いた。

夢とは無関係と知って、ほっとした。

 

 

「悪い夢を見てたんだろ?ずっとうなされてたよ。

俺が無理させたからな。ごめんな。」

 

優しく抱きしめられて、

カナは涙が止まらなかった。

 

「翔のせいじゃない。私が、私が悪かったの。」

 

しゃくりあげながら泣く姿を、

翔が“仕方ないな”という顔で

優しく見ていた。

 

「のど渇くだろ?また水を飲むか?」

翔伝いに貰う水が、冷たくて気持ち良い。

 

もう自分で飲めるのに、カナは翔から欲しかった。

「まだ、ちょうだい。」

 

「・・・・甘えん坊さん。」

ぎゅっと抱かれて、今度は口移しに氷をもらった。

大きくて口に入りきらない氷を

カナが舌で溶かした。

 

「カナちゃん、エロい。」

ひとしきり氷を溶かして

自分の口の中に入れたカナを見て、

翔がため息混じりに囁く。

 

「?」

意味が分からず、まばたきして翔を見ると、

 

「・・・・分からないなら、いい。」

彼が真っ赤になって言った。

 

なんだか翔が可愛く見えて、

カナはぎゅっと彼を抱きしめた。

 

“やっぱり翔が好き!”

カナは胸がいっぱいになった。

 

 

 

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