灼熱☆バケーション【後編】

〈第二十二章〉 ワルイ夢 その4

 

 

夢の中だからこそ、

タカヒトは大胆になっていた。

現実ではありえない展開に、興奮している。

 

彼の腕の中でカナは、

切ない表情をしていた。

 

翔の手で開拓された身体が、

タカヒトの汗で濡れてゆく。

掌で触れた部分が、火のように熱い。

 

“お互いに、一番大切な人がいるのに

他の相手も欲しいと思っている。“

 

その背徳感がたまらなかった。

 

だが、こんなにリアルなんて

本当に夢なのか?

ふと、タカヒトは怖くなった。

 

『俺は取り返しのつかないことを、していないか?』

 

ふと見ると、

しがみつくカナの瞳が、涙に濡れていた。

「怖いの。」

と彼女が言う。

「これ以上は、やめて。」

 

喘いでいるカナを見ると、

“もう止めないと”という気持ちと、

“もっと欲しい”という気持ちの間で揺れる。

 

「カナちゃん、これ本当に夢だよね?」

彼は思わず尋ねた。

 

「夢だと思う。だけどもう止めて。私、怖いの。」

カナは泣いていた。

 

「私、翔と知り合うまで

ずっとタカヒトのことが忘れられなかったの。

だから抱かれたらどうなるのか、ずっと考えてた。

でも、翔の事愛してるから

例え夢でも他の人とはできない・・・・。」

 

幼い少女のように、号泣するカナを見ていると、

タカヒトは後悔の念に駆られた。

悪いコトをしてしまった。

 

「ごめんよ、カナちゃん。」

タカヒトはそっとカナを抱きしめた。

彼女の華奢な身体が震えている。

 

「タカヒト、その気にさせちゃってごめんね。」

カナがそう言ったとたん、

部屋の扉が突然開いた。

 

「二人とも、何してるの!?」

タカヒトが青くなる。

 

その声は、聞きなれたひろこのものだった。

 

 

 

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