読書は、お習字の先生のご主人様が、読了された本をどっさり貸してくださるので、

ビジネス系から、大河ドラマ原作「西郷どん」まで・・・あれこれ読んでいます。



 

読めばなにかしらの刺激がある読書ですが、

この本は、8年前にやめてしまったお茶の世界が書かれていて、気持が色々動きました。

 

 

筆者は、ご近所のお茶の先生のところへ、お母様の勧めで20歳の学生の頃から通いはじめます。

なかなか所作を覚えられなくて、あっというまに5年、10年・・・分かります~(笑)

 

私は、25歳から18年、お茶のお稽古に通っていました。

習い始めた当初の戸惑いや、お茶で学んだあれやこれやを懐かしく思い出しました。

 

季節ごとに部屋のしつらえから、お道具、お菓子、着物までがかわること、本当に新鮮でした。

いま、見れば名前を言える植物も、多くはお茶のお稽古を通して覚えた気がします。

 

お茶事のお稽古では、一服のお茶でお客をもてなすための懐石料理も実習しました。

台所担当になると、築地に仕入れに行き前日から下準備をして、当日も早朝から料理を作ります。

 

その中で、お米の洗い方、包丁の使い方、ふきんの使い方など台所での所作をイチから教わりました。

ふきんは濡らしてから使うこと・・・乾いた布巾で拭ったら洗っても落ちない…ということも考えたこともなかった。

 

亭主や客の役になると、もてなし方、もてなされ方についての心配りを教えていただきました。

それが少しずつ身についてきてからのお茶は、亭主役もお客役も本当に楽しかった。

 

着物も、お稽古とはいっても、1年じゅう同じより、ちょっとでも季節感を出したくて、

無地の着物にあわせる帯を、春夏秋冬くらいは揃えたりして…そんな楽しさも学びました。

 

お稽古に行くと、半紙に名前を筆で書くのが「出席簿」でした。床の間の掛軸がまったく読めない・・・

それで習い始めたお習字は、今に至るまで細々と続いています。

 

ほんとうに、いろんなことを学べる機会そのものでした。

 

ずっと続けたいと思っていたのですが、事情によってやめたことは、今でも残念です。

再開できるものならばしたいという思いと、今の生活もまた自分らしいと今は思える自分も居て。

 

まあ、そのあたりは、違う記事にまとめてみようかな、とちょっと思ったりしていますが・・・

 

 

小説家の気分になって、お茶で学んだことを一つだけ書くとするなら、

「あとに続く人が気持ちよいように」という心配りをいちばん学んだ気がします。

 

記憶に残るエピソードは、たぶん先生がお家元の話をされたときだったと思いますが・・・

 

お家元では、昔は、井戸で汲んだ水をたらいに張って、朝起きたときに顔を洗うそうで、

たらいで顔を洗ったら、その水を捨てて、新たな水を張っておくのだと言います。

 

それは、後の人がすぐ使えるようにという心配り。

 

お茶のお稽古では「おさきに」という言葉をよく使います。

部屋に入るとき、お茶をいただくとき、後になる人に向かって「おさきに」と頭をさげます。

 

そして、お茶を先に頂いたら、薄茶の場合は、お菓子を相手が取りやすいように次客へ送るし、

濃茶であれば、先にいただいたら飲み口をきれいにして次客に送ります。

 

席入りも、先に入るときは「おさきに」と戸を開けて後の人のために開けておく、

履物を脱いだり履いたりする場合は、あとのひとのために履物を準備したりもします。

 

お稽古を終えた時の道具の片づけとか、次の人のために準備を手伝うとかも同じこと。

後に続く人や周囲の人たちが気持ちよく使うための、ちょっとした気配りは、普段の生活でも。

 

洗面所やトイレを使ったら、後の人が使うときに嫌な気持ちにならないようにすること。

それは自宅であっても、公共の場所であっても同じ。

 

公共の場所の洗面所などで特によく遭遇するのですが・・・

水はねや髪を整えた後の抜け毛が落ちてることがなんとも多くて、私はとても気になります。

 

その場合、自分が使ったあとは、前の人の汚れも、さらっと水で流します。

使い捨てペーパーがある場所なら、水はねもさっと拭います。(自分のハンカチまでは使わないけど)

 

次に使う人がだれであっても、気持よく使えるようにという気持ちは、お茶の時代に学んだと思うのです。

 

そういえば「レディーファースト」は「おさきに」の逆かもと当時は思っていました。

欧米のマナーでは、男性が一緒のとき、ドアを開けてくれて「お先にどうぞ」って女性が先に入ったりしますね。

 

ドアの向こうに敵がいるかもしれないのに!って、意地悪く思ってました(笑)

「おさきに」と先にドアの向こうに行って危険がないのを確かめてから、ドアをおさえて相手を迎えてよ、って(笑)

 

閑話休題・・・

「おさきに」の使い方はいろいろとあって・・・それは他人相手だけじゃなく、未来の自分相手にも。

 

いつも使うものがいつもの場所にない・・・と大慌てしたりイライラしたりしないように、

使うもののしまう場所は決めておく、ちょっと面倒でも元の場所に戻すのを忘れないようにすること。

 

脱ぎっぱなしで出かけた部屋着は、帰ったらしわくちゃだったり、ホコリっぽかったりしてイヤ。

脱いだ時に10秒くらいの手間でハンガーにかけておけば、帰ったら気持よく着替えられる。

 

あとのために、いまできることは何かと考えを巡らせること、

これがまた、性に合ってるようで、すっかりそんな思考回路の癖がつきました。

 

お茶のお稽古でこんなことを学びました、と言ったら・・・先生はどうおっしゃるかなあ・・・。

 

肝心のお茶の精神とはちょっとずれているような気がしないでもないけど、

大いに学んで身にしみてます、ということを、ちょっと書いておきたかったのでした。