(ほうきょう)とは「宝の箱」という意味である
罪障消滅・寿命長養に功徳があるとされている

陀羅尼の正式の名は「一切如来心秘密全身舎利宝篋印陀羅尼」という
不空訳『一切如来心秘密全身舎利宝篋印陀羅尼経』(大正蔵経19巻711頁下、713頁下)にある。また十世紀北宋の施護訳『一切如来正法秘密篋印心陀羅尼経』にもある

梵名は、一切の如来が加持したもうた、心髄の秘密舎利の宝印と名づくる陀羅尼

心は心臓。秘密は仏の悟りで、言葉に及ばぬ深い内容
舎利は全身舎利で、如来の全身を示す
は仏説の宝経を蔵する函である
王舎城の竹林精舎の旧跡の隣に、長方形の大きな池がある
カランダプシュカラ()とよんでいる
また印は宝篋の高い価値をあらわす。印(ムドラー)は、仏菩薩の悟りを、さまざまな歌舞伎の所作事にように、手であらわす手印から始まり、仏塔や経典まで示すようになった。またインドの女性が額に赤い粉で印をつけるように、スタンプでもある

この陀羅尼の誦出因縁は長行(長い散文)にある。マガダ国の無垢妙光バラモンが、釈尊を自宅に請し案内したところ、豊財園に崩壊した古塔があった。釈尊がこれを供養されたときに、古塔は感動し光明を放ち、大音量をあげて、仏陀を讃嘆した
ー「すばらしい。すばらしいことだ。世尊よ。今日の所行は最高です」ー
釈尊は塔をめぐり、上衣で塔を蔽い、かつ涙しかつ笑いたもうだ。一座のものがいぶかってその由をきくと、釈尊は申された。この塔は如来全身舎利塔で、億万胡麻のような舎利でできている。一切如来の授記(印可・成仏の予言)したもうた法要が蔵されている。経典護持の功徳、この経典のう肝要である陀羅尼を説かされた
仏説の諸陀羅尼呪を収納する諸塔は、すべて仏身と等価の威神力があるというのである。かくして、仏説の陀羅尼はすなわち仏身であり、後代には、塔を建ててこれに宝印陀羅尼を彫刻して宝印塔と称し、目のあたり如来の御姿に奉仕するのと同じ価値があるという信仰になったのである
日本は奈良朝時代からこの陀羅尼が信仰され、梵文や音写漢字で書かれ、或いは印刷され、経筒に入れて埋納され、宝筐印塔(ほうきょういんとう)という独特な形の塔が建立された
(本文は真言陀羅尼 坂内龍雄著 平河出版社 P95~98より)
 





*写真及び文章は高野山・執金剛神立像、重源の要請で快慶が制作 ...- 産経WEST より*
執金剛神立像の体内から見つかった墨書。梵字で「宝篋印陀羅尼」というお経が書かれ、その後に「建久八年三月廿九日」「於東大寺別所」などと書かれている(奈良国立博物館提供)

*写真は浄土宗 見上山 天然寺|三重県津市久居寺町 はより*



*写真及び文章は瓦版:よもやま便り - 「星のまち交野」へようこそ、交野市の ... より*

宝筐印塔は唐の沙門不空三蔵(中国の密教を大成させた僧)の訳による「一切如来心秘密全身舎利宝筐印陀羅尼経」の教えの中から出た名称で、同経の説くところによると「若し人この経を書写して塔中に置かば、この塔は一切如来の金剛蔵の卒塔婆となり、また一切如来陀羅尼秘密加持の卒塔婆とならん」、そして「この塔に一香一華を供え礼拝供養すれば八十億劫生死重罪が一時に消滅し、生きている間は災害から免れ、死後は必ず極楽に生まれかわる・・・」といった功徳が説かれている。