KKK 。クー・クラックス・クラン。

モルモン教。

ティーンエイジャーになってから、ある種の衝撃とともに、知った組織。

それなのに、このふたつの言葉には、それ以前にどこかで耳にしたことがあるかも、という記憶が、ずっとつきまとっていた。

 

KKK 15 歳くらいのときに、何かの雑誌で読み、テレビでも見た。ほぼ同時期に。昭和50 年ごろのテレビ番組は、未知のもの、不思議なもの、の特集であふれていた。

「おっかない」集団だ、と思った。白人至上主義者の集まりで、白い三角の頭巾をかぶり、裏切り者や、自分たちの教義にそまない人を次々に殺す。白人は何をしてもいいと思っているらしい。アメリカの組織。……、えー!? 「赤影」の金目教みたいなのが、アメリカには、現実にあるんだ…。

 

アメリカって、そんな人たちがいまだに生きてるの? あんなに進んだ国なのに? 出まかせじゃないの?

 

モルモン教と出会ったのは、大学1年生のとき。大学の門の外で外国人に呼び止められて。

モルモン教を知っているかというから、知らないと答えた。今では、モルモン教徒の前で「モルモン教徒か」とたずねるのは、差別意識を感じさせるタブーのひとつらしいけれど、当時の彼は、自らモルモン教を名乗っていた。

 

悪い奴じゃなさそうだったから、話を聞くだけならと、近くのマンションまで着いていき、2時間ほど話した。英語をしゃべってみたいな、という誘惑もあった。

 

勧誘はされたし、僕自身の宗教観なども聞かれたけれど、とくにしつこいわけでもなく、友好的に別れた。同世代のアメリカ人のひとりと話せたのもうれしかった。

 

会う友人に、モルモン教を知っているかとたずねると、半分くらいは、何かの情報を持っていた。酒、たばこ、アルコール、カフェインなどをまったくとらない、生活そのものの規律に厳しさを持つキリスト教の一派。

 

モルモン教徒のマンションに行った、というと、友人の半分が、「よく行ったね、むこうみずだな」「怖くなかった?」「取り囲まれたりしなかった?」とたずねた。そういう印象もあるの? 先入観をもっていなくて、よかったのか悪かったのか…。

 

こののち、外国文化との接点が増えるにつれて、アーミッシュ、主体(チュチェ)思想、フリーメイソン、ロスチャイルド家など、まったく知らなかった思想や団体などを知ることになる。

 

今、KKK とモルモン教をことさら文字にしているのは、「デジャヴュ感」のナゾが解けたから。

ああ、これか…。

びっくりだった。

どちらも「シャーロック・ホームズ」に登場していたのだ。

 

KKK は、短編集「シャーロック・ホームズの冒険」の「オレンジの種五つ」に殺人者の背景として。一方、シリーズの第一作「緋色の研究」では、加害者がいかにして被害者を殺すに至ったかを説明するうえで、モルモン教の歴史やあり方が詳しく書かれていた。どちらも12 歳のときに読んだ新潮文庫の本だった。

 

意外なミスマッチ。コナン・ドイルとアメリカ文化の接点。考えもしなかった。

シャーロック・ホームズを生み出したコナン・ドイルはスコットランド出身。

今では、イギリス人はアメリカをそうよく思っていないようだけれど、コナン・ドイルは、ホームズシリーズのなかで、アメリカへのシンパシーをしばしば語っている。

 

KKK やモルモン教は、「暗部」として扱われていたけれど。