クラシック音楽に限らないことですが、芸術はそのジャンルにおいて夥しい数の作品がありますが、人が一生のうちに触れられる数はほんの一握りに過ぎません。

私はクラシック音楽好きなので、そうでもない人から比べれば何倍、何十倍もの音楽に接してきましたが、その全貌を前にするとようやくその麓に辿り着いたに過ぎないもどかしさをいつも感じています。

そう思った時に、”まだ聴いていない、あるいはよく知らない曲をもっと聴いてみよう”と思う訳です。

最近は、そういった曲を馴染み深いものにしようとする時はその音楽のCDをPCに取り込んで繰り返し聴くというやり方で望んでいます。

今、ちょうど私にとって馴染みの無いベートーヴェンの初期の「弦楽四重奏曲」を勉強しているところです。

ベートーヴェンの「弦楽四重奏曲」は中期のラズモフスキー伯爵に捧げられた３曲や、中でも私見では一人ベートーヴェンに限らず音楽界の至宝とも言える「弦楽四重奏曲第１４番」がありますが、初期に作品１８として書かれた「第１番」から「第６番」までの６曲は聞いたことさえありませんでした。

聴いているのはスメタナ四重奏団のCDです。

この６曲はベートーヴェンが「交響曲第１番」と同じ３０歳の時に書いていますので、難聴に悩み遺書まで書いたちょっと前の頃ですね。

この６曲を聴いた時、３２の「ピアノ・ソナタ」を勉強し始めて有名な「第８番”悲愴ソナタ”」の前の７曲から受けたのと全く同じ感想を持ちました。

”すでに音楽として完成している”という印象です。

シューベルトの「交響曲第１番」を聴いた時、シューベルトも早くから随分立派な音楽を書いていたんだと思いましたが、その”立派さ”とベートーヴェンから受ける”完成している”という感覚はちょっと違います。

シューベルトの”立派さ”は時を追うごとに内容が変化していく訳で、それが普通じゃ無いかと思うのですが、ベートーヴェンはもう骨格として”完成”していると感じるのです。

ベートーヴェンはこの後はその骨格に一聴聴く人を魅了する何かを付け加えていきます。

例えばハイドンの有名な”５度”や”皇帝”を含む「エルデーディ四重奏曲」やモーツァルトの「ハイドン・セット」など全部聴いている内に飽きがきてしまうのですが、このベートーヴェンの初期の６つの「弦楽四重奏曲」を流して聴いていても飽きるということがありません。

ただ、続く曲の方がより魅惑的な要素が加わってはいます。

「弦楽四重奏曲第１番」の第一楽章です。

最後に、ベートーヴェンの音楽はは早くから完成され、それに色々付け加えていったと書きましたが、最晩年にそれまでの自分の音楽と決別したかのように別の世界に入っていきます。

それが「ピアノ・ソナタ第３２番」であり、「弦楽四重奏曲第１４番」でした。

マイ・CDコレクション（４５）〜音楽を勉強する？