素敵な音楽は    いつでもキミの耳もとに。




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話の都合上、学生松 吹奏楽松を使用しています。


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木曜日。
二個下の弟が学校帰りに事故に遭ったと聞いて、片割れの弟と家を飛び出した。もう日の暮れた、夕方に近いころだった。
優しい弟は、道路に出てしまった仔猫が轢かれそうになるのを守って身代わりになってしまったらしい。本当に心底優しい弟だと思う。いつもそうなのだ、一松は俺たちの中で誰よりも優しい。表に出さないためにほかの人には全く気づかれないから、勿体ないと思ったこともあったが今はそうは思ってなかった。一松が優しいということは五人も知っていれば十分ということになったからだ。

病院には十四松とおそ松がいた。ベッドのそばで椅子に座っている。一松は既にベッドで横になって静かに眠っていた。
「随分早いじゃん。まだここについてから15分も経ってないけどぉ」
おそ松はいつもの調子だった。特に焦る様子もない態度に、痺れを切らしたのは家から一緒に走ってきたチョロ松だった。
「一松はっ!! どうなんだ!」
突然声を張るものだから、その場にいた十四松が肩を揺らして驚いた。おそ松は少しを顔を顰めて「うるさいなぁ」と呟いた。
「頭強打して病院で滅茶苦茶検査したけど、無傷だし頭もへーき。キセキですねぇだって」
チョロ松はしばらく顔を顰めていたが、ふっと表情をゆるめて近くの椅子に座った。
「...よかった」
小さくそう言って、長いため息を吐いた。俺も暴れていた心臓が急に大人しくなって、呼吸のやり方を思い出していた。おそ松は続けて、直に目が覚めるらしいよ、と付け加えた。それを聞いたチョロ松がトド松に連絡を取ると部屋を出ていく。
「目が覚めるまでは病院だけど、まあすぐでしょ」
一松が事故に遭った時間が夕方だったから俺たちが立ち会えてきるだけで、面会時間はとっくに終わってしまっていた。チョロ松も出たし、今日は帰ろ。とおそ松は言い席を立った。個室を出ていく。俺も続けて出ていこうと思ったが、立ち上がらずに一松の顔を覗き込む十四松がいた。
「十四まぁ~つ? 離れるのは寂しいが、今日はもう」
言いかけて、十四松が勢いよく立ち上がった。椅子が音をたてて倒れて転がる。しかしそんなものには目もくれず、十四松は走って病室を出ていってしまった。
「え...」
俺が一体何をしたと言うんだ...。


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一松が目を覚ましたのは次の日の夕方だったから、兄弟たちは揃ってその翌日に見舞いに行った。目が覚めたと病院から連絡を受けたときに、一松会いたさにみんなが家をとんで出かけたのだが、もう面会時間は無いから明日にしなさいと松代に言われた。それなら部活に午前中だけ出てから行こうとなり、午後は休んだ。本当は朝に行きたかったのだが、一松のことだから部活休むなって怒られそうだと兄弟で話し合い、午後からにしようと。しかし明日は日曜日。月曜日は部活が休みで口が鈍ると嫌だ、という理由で皆楽器を持ったまま病院に行った。十四松は打楽器だからスティックを持って。優しさから、一松の楽器も持って帰っていくことになった。十四松が代わりに楽器を持っている。


続く。