ACT:Ⅰ
僕は暗闇の中に一人立っていた。しばらくして闇の奥から頭に声が響く。
「小僧、人が憎いと思ったことはあるか?」
その声はまるでアニメの怪物のように禍々しく、重い声だった。
「あったら?」
どうせ只の夢だろう?どう答えたって一緒さ。
「お前の肉体をもらおう!」
なっ!
「ハア、ハア、ハアア・・・。」
気がつくと、息を荒くして僕はベッドの上に横たわっていた。
「あ・・・夢・・・か。」
ゆっくりと僕は起き上がり、部屋を出て水を取りに行く。
まったく、朝からあんな変な夢見せられちゃテンション下がるなあ。まあ夢のことは忘れて、さっさと学校に・・・・」
「あら~!?」
急に大きな声がリビングに響き渡る。
「珍しいね、ツっちゃん、あんたが自分で起きてくるとは。関心関心。」
「僕は今寝覚めが悪いんだ、それから「ちゃん」付けで呼ぶな。」
こいつは僕の姉で、僕のこの世で最も苦手な生き物の、「時雨」。僕が高校生になっても未だに子供扱いしてくる。根は悪くないんだけど。
「そいじゃ僕もう行くから、よい一日を。」
「車に気をつけてね~。」
「うるっさいな!!もう。僕はもう高校生だ!」
そう言って足早に家を出る。毎日こんな風に送り出されるもんだから、恥ずかしくてたまらない。
「おっはよ~!ツムジ!」
「なんじゃ、今朝は珍しく早いの~。」
「明日風 つむじ」。これが僕の名前。この二人は僕の幼馴染(ていうか腐れ縁?)。ショートヘアーで銀のブレスレットをしている少女が、「霧峯 楓」。そしてもう一人のオヤジ臭い男が「萩川 凪」。3人とも同じ高校で同じクラスである。正直僕はクラスの中でも地味な方なので、こうして気軽に話せる友達がいるのは有難い事だ。
「今朝はえらい早いの~。なんか雨でも降りそうじゃ。」
僕だって好きで早く起きたんじゃない。あんな嫌な夢見なければいつもはまだベッドの中で気持ちよく寝ているだろう。それでも毎朝この2人が迎えに来て、姉に起こされるのはたまったもんじゃない。もう慣れたけど。
鞄の中からチュッパチャップスを取り出し、口にほおばる。お気に入りの「いちごクリーム味」。
いつもなら学校の帰り道にこうして話しながら食べるのだが、今日は夢のせいもあって、気分転換に食べることにした。
「あれ?今日は食べるの早くない?」楓が気づいた。
「ちょっと気分が悪くてね、朝から変な夢を見てさ」
馬鹿々々しい。あんなの只の夢だと言うのに、話しても笑われるだろうと思い、僕はそこで話すのを止めた。多分楓の事だから「どんな夢だった?」と面白半分に聞いてくるだろう。
「ねえねえ、どんな夢だった?」言ったそばからこれだ。僕は無愛想に「別に」と答え飴をなめ続ける。それ以上夢について僕に聞いてこなかった。聞いても無駄だと思ったらしい。そこに凪が割り込むように話してきた。
「そういえばのー、わしも今朝妙な夢を見たんじゃ。たしか変な鬼のような声がわしにこう聞いてきたんじゃ、人を憎んだことはあるか~ってのぉ。そんなのあるわけ無いと答えたらその声がわしの体を貰うと言って、そこで目が覚めたんじゃが、あんな恐ろしい夢初めて見たわい。」
「超偶然なんだけど!あたしもその夢みた!」
珍しいな、3人とも同じ夢を見るなんて。マンガの中の話みたいで少し面白かった。その話題で少し機嫌が良くなった。
学校についていつもの様に普通に授業を受け、現国はだるいのでサボった。