溺れる子が、そろそろ出てきた。夏が来たのだ。

小学生の頃、仲間と一緒に、貯水池に、泳ぎに行った。

一人だけ泳げないやつがいた。

みんなは、そいつをからかって、足がつくから飛び込んでみろ囃し立てた。

そのおはやしに、私が参加していたかどうかが、問題だ。

参加していたと思う。

その子は飛び込んだ。

水底が、土手からマイナス何メートルか、もぐっても底につかないほどの、水の奈落へ。

溺れ始めた。

助けて、助けて。溺れる、溺れる。

絶叫しながら、水面を両手で叩く。

私は、水泳の選手である友人に、助けに行けと言った。

その友人は、溺れかけている子と格闘した後、足で蹴って、土手を走り上がって来た。

しがみつかれた。こっちも死ぬからなあ。

みんな、その子が溺死しかけているのを、体育館坐りして見ている。

私は、水際に立って、七転八倒する友に呼びかけた。

仰向けになれ。空を見ろ。両手を広げろ。ケツを天に突き出せ。ゆっくり息をしろ。僕に合わせろ。すー、それ、すー。いっしょに、いっしょに。はー、それ、はー。

その通りにしたので、彼は助かった。

水面に、仰向けに、大の字になって、プッカリ浮かんで、静かに、ゆっくり回転していた。


私は、今なお罪悪感を持ち続けている。

みんなと、囃したて、面白がったはずなんだ、私は。