思い出してごらん。草ヶ江小学校の近くに住んでいた、とし坊という、知的障碍者がいたねえ。
ワチキより年上だったのに、ワチキは、彼に命令して、とし坊、前にならえ、などと怒鳴った。
少年は残酷である。取り返しがつかない。
なのに、そんなワチキをとし坊が慕うようになったのだよ。
彼はたちまち死んでしまった。
ワチキが東京に来て、かつて福岡に在住だった特殊学級の保母さんに会った。知人の奥様だった。
彼女が見せてくれた写真にとし坊がうつっていた。
この子は知っています。近所に住んでいました、一緒に遊びました。
しかし、いじめたとは言わなかった。
とし君ねえ、よーくおぼえていますよ。いじめられてはいたけれど、いじけないで、ぼーよーとしていて、毎日、夢を見ては、私に語ってくれました。お釈迦様ご自身が見るような夢で、私は聞くたびに、茫然としたものでした。あっけなく死んでしまいました。十六歳でしたね。
とし坊を、社会には余計な、負担をかける、邪魔者として、殺戮して正当であるという主張を、粉砕せよ。