初犯の人間の取調は、性格などを把握するため
今までの経歴や生活まで、事細かに聞かれる。

逮捕された事により、どこか吹っ切れた俺は
自分の過去を全て、担当刑事にブチまけた。
過去の長いいじめ体験や自殺経験など、全て話した。

辛い記憶をフラッシュバックさせながら話すので、話しながら泣いた。
取調室という、密閉空間を逆利用し、
誰にも見られないから、思いきり泣きながら話した。


担当刑事は、ドラマに出てくるような人情刑事で
俺の話を騙って聞いてくれ、自殺の話の時には、うっすらと涙を浮かべていた。


俺みたいな人間のクズのために、泣いてくれる人もいるんだなあ、と
その時はホントに不思議な感覚を覚えた…



そして取調の中で、被害者へ弁済の話になった。


働けず、金に困って犯罪まで犯した俺に、そんな金があるはずもない。

被害件数と総額もそるなりの数だったのと、弁済もできないため、
数年の懲役生活は覚悟していた。


しかし、まず間違いなく絶縁してくるだろうと思っていた厳格な父が
まさかの代理弁済してくれたのだ。


この話を聞いた時、俺は2度目の涙を流した…
通常、逮捕されると、まずは警察が検察へ、犯罪の内容をまとめて送検するため、
最大48時間の「刑事拘留」と呼ばれる警察の拘留がはじまる。
その間に警察は、調書と証拠を揃え、検察へ提出する。

そして検察は、裁判にかけるかどうかを判断するため
検察による取調を行う。そのため最大21日間の「検事拘留」へと続く。
そして裁判がはじまり「未決期間」と呼ばれる拘留期間の間に
裁判が行われ、判決が出る。
殺人などの、重大犯罪でない限りは、罪状認否、審理、結審、判決で
2~4回平均の裁判で終わる。


俺は、インターネット詐欺という
証拠との因果関係を立証しにくい犯罪内容だったため
1ヶ月近くは、取調漬けの毎日だった。


その中で、皮肉にも俺は「人の優しさ」というものに
はじめて触れる事になった。


子供の頃から汗かきだった俺は、気がつけば
こと女性に「臭い」「汚い」と罵られ、いじめられてきた。

親しかった友人も、同調していじめる側に加わる事も珍しくなかった。

幼稚園から高校卒業まで、幼少時に過ごした期間は
全て完璧にいじめを受けていた。
その頃から俺は、特に女性に対しては、完全に信用ができなくなっていた。

一度だけ、泣きながら親に相談した事があるが
「勉強すれば良い」という苦し紛れな回答しかもらえなかった。


俺はその時、子供心に絶望し、全てを諦めた。


そんな周囲に囲まれて生きてきた俺だから
「人の優しさ」なんて物は、幻想だとしか思っていなかったし
その優しさも、すぐに裏切って攻撃側に回るだろうと思っていた。




しかし、逮捕され拘留される生活の中で、
俺ははじめて人の優しさ、暖かさに触れることができた…
ある日の朝、玄関から男性の声

出てみると数人の男性

ああ…ついに来たな…と、俺は悟った。


先頭の男に

「何で来たか、わかるな?」

と聞かれ、俺は仕方なく小さく頷く。
そして、家宅捜索の礼状を見せられ、家宅捜索がはじまる。
逮捕の覚悟はしていたので、証拠の提出に素直に応じたせいか
2時間程度で捜索は終了。

俺は逮捕され、被害届の出ている遠い県へと連れていかれた…




そして、俺の長い拘留生活が始まった…