わずかひと針
草木を別けて 陽が射した
古いアルバムに
副(そ)える走り書き
手に捕まえた クツの音
まるで飛び出す絵本
今を馳(は)せるよう
いとしい名前に
応える心だけに
よぎる奇跡が混じり合うなら
泥に埋もれた
方位の命まで
嗅ぎ付けたい
わずかひと針、時を進めたい
枯渇の川のいじらしさ
熱を取りのぞく
風のハンカチーフ
ゆらゆら 道をしのびつつ
彼は思い出しています
「水には、逢えたか」と
やさしい名前に
勇気をもらえた日に
よぎる奇跡が混じり合うなら
すこしぐらいは
真白な気持ちで
手を振りたい
つぎのひと針、時を信じたい
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