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手を振る僕のことを
どれだけ君は気づいていて
声に出来ない感情は
どれだけ君に近づけたんだろう
ある日の夕暮、空気が
とても冷たく動いて
次の季節の摸写を
あらかた始めていたんだろう
遠くに見えていた世界は
もうそこまで来ているみたい
ベランダには文句ひとつも
言わずにただ
水を待つ鉢植
気持ちのコントロールが
利かないくらいさ
わけもなく
かなしくなる
もしかしたら
届くかも知れなかったんだ
ふたつのうちのひとつが
まだ蕾のまま
必死に生きようとしてる
まさか それが
僕ならば…なんて
思えたんだ
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