「なんか、最近大人しくない?」
なんて言いながら、隣の隆弘が顔を覗き込んできて思わず、
「近い」
ムスッとしながら、空いてる手で顔を押しのけた。
「……気のせいみたいだな」
恨めしそうに呟かれても、私はそっぽを向くだけ。
エレベーターに乗り込んで、車へと歩く。
「時間があるなら、コーヒーでも買いに行く?」
「キャラメルフラペチーノ」
隆弘の申し出に、すぐさま反応する私。
甘い飲み物が飲みたかったから、嬉しくて頬が緩む。
「はいはい」
そんな私をクスクスと笑いながら、助手席の扉を開ける隆弘。
いつものように、お礼を言って助手席に乗り込む。
乗り慣れた車。
この席に、他の女が座ったのかと考えるとヤキモチが生まれるけど。
「何で不機嫌になるんだよ。行くぞ」
今隣にいるのは私だけだから。
少しだけ、頑張ってみたいと思う。
静かだけど、居心地の良い車内でボーッとする。
「着いた。キャラメルフラペチーノだよな?」
コーヒーショップに着いて、そう問いかけてくる隆弘。
「やっぱり、抹茶ラテ」
「抹茶ラテだな」
「あ、でもミルクココアも良いかも」
次々に頭に浮かぶ飲み物を口に出せば、呆れた表情の隆弘。
「わがまま娘、店内で悩め」
「えー、やだ」
悩む私に、痺れを切らした隆弘だけど私もわがままを言う。
「んー、」
腕を組んで悩み続ける私に、
「もう勝手に選んでくるから、待ってろ」
隆弘が車から降りて、店内へと行ってしまった。
私は頬を膨らませて、ただ拗ねるだけ。
なにさ、ちょっとくらい悩んだっていいじゃん。
例え好きであっても、許さない。
暫く頬を膨らませていると、ガチャリとドアが開く音がする。
「まだ、拗ねてるのかよ」
呆れた声と共に隆弘が運転席に座って。
「ほら」
私の分の飲み物を渡される。
ホットのそれに鼻を近づけて、スンスンと匂いを嗅いでみれば
「抹茶ラテ…」
悩んでた中で私が一番飲みたかったもので。
「抹茶ラテ、1番多く呟いていたからな」
違った?
ちょっと困ったように、笑みを浮かべる隆弘。
あぁ、なんだろう。
胸が苦しくて、痛くなる。
こういうのを、キュンキュンって言うんだっけ?