日曜日、前から行ってみたかった調布飛行場へと向かうこととした。
最近ダウンロードしたNavitimeのアプリで調べると、1時間50分ほどの距離。往復でだいたい50キロくらいだから、日帰りのサイクリングには最適である。
前回の熱海行の時は金曜日ものすごい酒を飲んだので超ダルい中でのスタートとなったが、今日は前日禁酒までして臨んだ。
あいにく晴れ間がなく底冷えがするような寒さだったが、雨の心配はなく、結果として日焼けの心配も雨の心配もない良いコンディションの中走ることができた。ただ、それにしても少々寒過ぎる!いつもなら走り始めて10分もすればじわりと汗がにじんでくるのに、今回はまるでその気配がない。
しかし、それでも坂などを超えて足に力を込める状態が長く続くとだんだんと体もあたたまり汗をかいているのがわかった。
品川区の自宅からだと、二子玉川を経由するルートが一番近いのだが、実際ナビタイムの推奨ルートは、細い道や自転車の通行スペースがほとんどない道を通るコースだったので、かなりのイライラを抱えながらの走行となった。これならば少し余計に時間がかかったとしても常に全速で走れる大通りの方が良い。
大体半分ほどまで来たところで、もう嫌になってきて帰ろうかなあ・・・と思ったりもしたが、やはり初志貫徹ということで気温もなかなか上がらない中、ひたすら調布を目指した。今回のルートはほとんど坂もなく、発汗量も少ないので疲れ自体はそれほどでもない。
大学4年間住んだ東京都下の慣れ親しんだ風景が移ろう中を気持ちよく駆け抜けていく。
道の両脇に植えられた銀杏の木はようやく紅葉を始めたようで、町に明るさと彩を加えている。走っても、どれだけ走っても、手に入れることはできない風景の中、ペダルを漕いでいく。今まで何度となくこの光景の中を走って来た。しかし、それはいつの日もただ走り過ぎるだけの光景に過ぎなかった。どれだけ、何度見ようとも、時には美しいと思っても、僕はいつも走って駆け抜けていくだけだった。大学生の時であっても、社会人になってからであっても、そして今この瞬間も。
常に走って通り過ぎるだけの景色であるが故に、それと心から向き合った、心から楽しんだという落としどころを見つけることなく前から後へと飛び去って行く景色。自分が果たしてこの景色と向き合いたいと思っているのかどうかはわからないが、それはその一瞬で通り過ぎてしまう切なさとともに漠然なイメージとして胸の中に焼き付けられることになるのだ。そして、僕はこれからもこの景色を手に入れることなど、出来ないのだろう。
12時30分過ぎに、調布飛行場に到着する。
一応、ここからは民間機が東京島嶼部への路線を持っており、大島や神津島などに行くことができる。ちょうど離陸前の時間帯だったようで、小さなプロペラ機が離陸準備を急いでいた。しかしこの建物、空港といえど売店の一つもなく、自動販売機にパンや菓子などが売っているだけである。空港なのに一般的な学校よりもはるかに小さく、展望デッキでさえ教室2クラス分くらいしかない。
待っていると、プロペラ機が1機大島に向けて離陸していったが、まわりで見送っていたのはほとんどが小さな子供の親子連れだった。大の大人で見学しているのは僕しかいない。
帰り道、いつもサイクリングの後には必ず脂っこいラーメンかすた丼を食べたくなる衝動に駆られるのだが、先週2回ラーメンを食べてしまった僕としては、ここは我慢し、自宅で自炊した方が賢明ということはわかっていた。しかし、サイクリングの途中で腹が減って来るともう食うことしか考えられなくなってしまい、ラーメンに飛びつくことになってしまうので、今回は前もって手を打った。
帰り道にドラッグストアがあり、そこに菓子パンが売っていたので、そこで菓子パンの「ナイススティック」を買って食べたのだ。ちなみにこのパンはおばあちゃんの大好物であり、昔からよく食べていたものでたまに食べたくなる。
近くに公園などもなかったので、ドラッグストアの自転車置き場の縁石の上に座って食べていたら、横に自転車を停めていた女に「コイツ頭おかしいんじゃね?」的な感じで見られた。まあ逆の立場ならそう思うのはわからんでもないが、とにかく疲れた時は少しでも座りたいのである。ちなみにパンは450キロカロリーと意外に高カロリーだったが、後からラーメンなどに飛びつかなかったことを考えると一応ラーメン防波堤の役割は果たしてくれたわけだ。
同時に栄養ドリンクも飲んだので、幹線道路を選んだ後半戦は驚くほどのスピードで走り抜けることができた。ナイススティックの効果もあり、家に帰ってもラーメンを食べたいという誘惑に打ち克つことができ、前日半額で買って冷凍しておいたカツオのタタキをムニエル風にしたものとほうれん草のお浸し&キムチという非常に健康的な食事をしたのだった。