ZOO!
真実は森の中…
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0 遠吠え


夜になると
変な事を考える。

例えば
自分がヒーローになって街で大活躍する姿とか、このまま羽が生えて
魔女みたいに空を飛んでいけそう、
みたいな妄想。

きっと
誰にでもあることなんだろうけど、
俺の場合はちょっと違うのかもしれない。


家の近くに森がある。

街の人間は誰も森に
近づこうとしない。

理由はよくわからないけど、
入っちゃいけない場所ってあるよな。
学校の屋上とか、
スタッフオンリーの扉の向こうとか、

そうゆう場所って
好奇心で入っちゃう奴が一人は絶対いるけれど
森の場合は違う。

だって
戻って来たやつが一人もいないから。

先生に怒られるだけなら
大したことないけど、
命にかかわるなら話は別。

だから
誰も森には近づこうとしない。


俺は
そんな森が気に入っている。
夜になると、よく
森の周りを散歩する。

森から吹いてくる風とか
なんかの生き物の出す音を聞いていると
凄くワクワクする。

たまに
狼の遠吠えも聞こえたりする。
一緒に月に向かって
吠えたい気分になる。
もうワクワクは止まらない。

…ワクワク?
は、ちょっと違うかな。
上手く言えない。

全身の毛が逆立つ様な
体中の細胞が沸き立つ様な…
とにかく良い気分。


そんな感じで、考える。

この森の向こうには
何があるんだろう。

街では
野蛮な獣がうろついているだの、
神隠しに会うだの言われているけれど、
もしかしたら違うんじゃないか。

森の向こうには別の世界がある。

帰ってこなかったやつは
実はみんな生きていて
そこで暮らしている。
きっと
よっぽど楽しい場所で
帰りたくなくなるんだろう。

こっちでは
むこうは地獄の様に言われているけれど、
実はむこうは天国で、
こっちが地獄なのかもしれない。


そんな妄想を
歩きながら考える。
下らない考え、妄想、

ただ一つ
みんなと違うのは、
俺がその妄想を
本気にしている事だ。


なんて、
なんの証拠も根拠も無い。

やっぱり只の妄想。