始まりは2020年の秋でした。
新型コロナウイルスの影響で例年とは違う一年で、特に、夏以降、心身ともにいつも以上のしんどさを感じていました。緊急事態宣言によって遅れていた業務を進めるための労力、職場のゴタつきによるストレスが主な原因だと、その時は思っていました。
そんな秋のある朝、目覚めると経験したことのない耳鳴りが右耳で鳴り続けていました。ライブハウスに行った後に経験するような耳鳴りとは全く違う異質な音。頭の中(というより耳を中心に顔の中)で反響する自分の声。周りの音が聴こえ辛い。
明らかにおかしいと感じた私は、耳鼻咽喉科を受診しました。
診断結果は突発性難聴。ステロイドによる投薬治療が始まりました。
幸い、ステロイドの効果はすぐに現れ、数日の内に耳鳴りは治りました。
3度目の診察の時には、耳鼻科の先生から聴力の回復が伝えられました。
しかし、この時、先生から思わぬ指示が出されました。
「念のためMRIを撮ってきてください。聴覚神経に腫瘍がある可能性もあるので」
聴覚神経?腫瘍?全く予想もしていない展開に慌てる私。
それを察した先生がの「念のためですから、念のため」というフォローで我にかえり、支払いを済ませ紹介状を受け取ってその日は帰路につきました。
「念のためですから」
そう、それは念のためでした。
しかし、この「念のため」のMRIがその後を大きく揺るがしていくことになるのでした。