ヒツジとサボテン

ヒツジとサボテン

なんとなく続けてみる。

 わーい。2027年春発売だー。まだ時間あるー笑

 あと一年あれば、きっとリバースをクリアできるぞ。そうだ、元日に立てた今年の目標はリバースクリアだったはずだ。初志貫徹だ。あと半年できっと。きっと……。

 

 

 

 

 

 小話 『初志貫徹』 written by 未

 

 

 

「ぜんぶ終わったらゆっくり話そうな」

 

 もやもやする。

 そんなことを言われてしまえばとてももやもやするというものだ。それはナンバリングが違うのでは、とつっこみたくもなったが、当の発言者は家を出て行ってしまった。

 もやもやがもやもやのまんまもんもんしてもうもんやもんやだもうやだ。

 

 時を遡ること三時間。

 

     *     *

 

「ただいま」

「え、お姉ちゃん? おかえり。早かったんだね」

 

 珍しく姉が定時に帰ってきた。普段より二時間以上早い。

 

「連絡くれたらごはん早めに作ったのに」

 

 時刻は既に夕飯時だが、いつも姉の帰宅に合わせて作るので今日もまだ支度を始めてはいなかった。

 

「わざと連絡しなかったんだ。たまには一緒に作りたくてな」

 

 姉はそう言うと珍しく、少しはにかんだような笑みを見せた。

 言われた私も何だか気恥ずかしくなりながら、部屋着に着替えている姉を待つ間、私のものより大きめのエプロンを持つ手の力を込めたり抜いたりしていた。

 

 それから姉と一緒に台所に立った。

 今日のメニューは、と問う姉に、つみれ、と答える。

 鶏むね肉のつみれ。エノキを入れるちょっと変わり種。ヘルシーで美味しいんだよ、と教えてもらった今日が初挑戦のメニューだ。といっても、とっても簡単お手軽な料理だけれど。

 鶏むね肉をミンチにする私の隣で、姉がエノキを細かく切っている。右手に包丁。エノキを押さえる左手は義手だ。その特製の義手を、姉は血の滲むような努力で使いこなし、今では流麗な文章すら楽々と書いて見せる。右手に負けず劣らずの字を書けるようになった頃には、「私は左利きなんだ」とことあるごとに嘯いていた。まったく意味が分からなかったし笑えるような冗談でもなかったのだけれど、その言葉と姿は、失ったものを取り戻してさらにそれ以上を得られるんだ、と私に示そうとしてくれているのだと思えて、まだ新しい生活に不安の方が大きかった私はそんな姉を頼もしく、そして誇らしく思ったものだった。

 

「シェルク、見てばかりいないで手も動かさないといつまでもご飯が食べられないぞ」

 

 姉に言われてはっとした。

 姉の手元のエノキは既に綺麗に切られて小さめのバットに盛られていた。私は慌ててフードプロセッサーを両手で押さえて回し直した。けたたましい音を立てながら自動で細切れになっていく鶏むね肉を見ながら私は思った。

 役割、逆では?

 エプロンをつけた姉が手を洗ってすぐにそのまま包丁を手に取ったので無意識にエノキを手渡してしまったが、包丁で切る作業とフードプロセッサーを押さえるだけの作業、片手が義手の姉に任せるべきは普通は後者だろう。

 ごめんね、お姉ちゃん。

 そう謝ろうとしたとき、

 

「ごめんな、シェルク」

「え?」

 

 姉が出し抜けに謝ってきて面食らう。

 

「おまえの気持ちをもっと尊重すべきだったな」

「どうしたの急に」

「覚えているか。おまえがまだ小さかった頃、大泣きしながら――」

 

 その時、姉のズボンのポケットから着信音が響いた。

 姉は眉間に皺を寄せたまま2コール無視して、3コール目で深くため息をつき、4コール目で手を水で洗い、5コール目で電話に出た。

 

「もしもし。――ああ。――そうじゃない。だから伝言を残しただろう」

 

 話しながら私に対して目だけで謝罪すると、姉はキッチンを出てそのままリビングからも出て行った。職場からと思われる電話に苛立ちを隠さずに答える声が廊下から響く。

 私はひとり残されたキッチンで、出来上がったミンチを取り出しもせずにぼうっとしていた。

 数分後、電話を終えた姉が戻ってきて言った。

 

「すまない、シェルク。戻らないと行けなくなった」

 

 そして部屋着から仕事着に着替え直して、玄関先で言ったのだ。

 

「ぜんぶ終わったらゆっくり話そうな」

 

     *     *

 

 それから三時間が経ち、私はベッドの上でごろごろもんもんしている。

 潰すように抱え込んだ掛布団のはしっこをかみかみしながら姉の言葉について考える。

 何を謝られたのだろう。小さい頃に何があったのだろう。

 姉は時々、私が小さかった頃の話をしてくれるが、正直なところほとんど覚えていない。それはそうだろう。まだ2歳や3歳だった頃のことを覚えている人などどれくらいいるというのか。

 大した話ではないことは分かっている。ただ間が悪かった。

 あの瞬間、謝るべきは私だったのだ。それが急に逆の立場に置かれ、その原因は自分の記憶にないであろう幼少期のことだと示唆され、詳細は宙ぶらりんにされたまま。

 ぜんぶ終わったら、と言っても料理は作り終えてしまった。正確にはまだ焼いてはいないが、お米は炊きあがっているし、お味噌汁は温め直すだけだし、サラダは冷蔵庫の中。あとは姉が仕事を終えて帰ってくるのを待つばかり。

 こちらはぜんぶ終わっていますよ。

 まだ帰れないのですか。

 余計ないちぶを残していかないでください。

 いつもは気にも留めない時間が、今日は無性に寂しいです。

 

     *     *

 

 さらに一時間。

 うとうとしていた私は玄関の鍵が開く音で目を覚ました。

 

「ただいま」

「おかえり」

 

 今日二度目。

 

「悪かったな」

「ううん。仕方ないよ」

 

 物わかりの良い妹の顔をしてみせる。

 そんなことを意識してしまったから、余計な感情が顔に出てしまっていたのだろう。姉は苦笑しながら、私の頭にくしゃっと手を置いて少しだけ大袈裟に優しく撫でた。

 

「ごはんは食べたのか」

「まだ」

「じゃあ一緒に食べよう」

「うん。すぐ準備するね」

「つみれは私が焼くから置いておいてくれ」

「大丈夫だよ。疲れてるでしょ」

「いや、そういう気分なんだ。やらせてくれ」

 

 姉はそう言うと着替えるために自室へと入っていった。

 

     *     *

 

 再び姉妹でキッチンに並ぶ。

 と言っても、他の準備は終えているので私は姉がフライパンでつみれを焼いている様子を見るばかり。香ばしい香りに食欲を刺激されつつ、色付いていくつみれと少し楽しそうな姉の表情を

交互に見る。

 そろそろ聞いてもいいだろうか。食卓に着いてからの方がいいだろうか。それとも食後、いやもう遅いから明日にした方が。

 もんもんのぶり返しと戦っていると、姉から口を開いてくれた。

 

「さっきは話の途中だったな」

「うん。すごく気になってた」

 

 私が正直に言うと姉は笑った。

 

「悪かったよ。全然たいした話じゃないんだが」

「そうだとは思うけど、あんな話の切れ方じゃ気になっちゃうよ」

「そうだな」

「どうして謝ったの?」

「それはな――」

 

 少しはにかむようにして間を開けてから姉は言った。

 

「フードプロセッサーを買っておいたのは私の落ち度だったな、って」

「……うん、ごめん、わかんない」

「私がエノキを切ってる間、ずっと難しい顔をしてこっちを睨んでただろう」

「そんな顔してたつもりはなかったけど」

「それで思い出したんだ。そういえばシェルクはミンサー派だったなって」

「何、その派閥。初耳だけど」

「たくさんの細い穴からミンチがにゅるにゅる出てくるのを手を叩いて喜んでた」

「まったく覚えてない」

「出てきたミンチを小さな手で鷲掴みにして大はしゃぎだったぞ」

「本当に覚えてない」

「挙句に私の顔に向かって投げつけてきた」

「一切覚えてないけどごめんなさい」

 

 どうせそんな話だろうと思ってはいた。

 思っていたけれど、だったらなおさらあんな含みを持たせて出て行かなくても良かったのではないだろうか。おまえが小さいときにミンチをおもちゃにしていたのを思い出しただけだ、と説明してくれればよかったのではないか。

 

「それは味気ないだろう」

「姉さんのつみれには塩コショウをたっぷりかけてあげますよ」

「その匙加減は焼き担当の私次第だ」

「だから自分が焼くって言いだしたんですか!?」

 

 姉は高笑いしながら焼き上げたつみれを皿に乗せた。

 

「何はともあれ、ご飯を食べよう。遅くなってしまったのは、本当にすまなかった」

 

 姉は笑みを湛えたまま両手で器用に皿を持って食卓へと進む。

 私は手ぶらでその後に続きながら、そういえば私はどうして謝ろうとしてたんだっけ、と疑問を浮かべたが、席に着いていただきますという言葉を発するとどこかへ霧散してしまった。

 

     *     *

 

「きゃはははは」

 

 小さな妹は小さな手でミンチに触れては楽しそうに笑っていた。

 何がそんなに楽しいのだろう。感触だろうか。色だろうか。温度だろうか。握るたびに形を変えるからだろうか。粘土遊びに似ているからだろうか。

 小さな私はそんな疑問を浮かべながら興味深く小さな妹を観察していた。

 そんな私の頭上からまた楽しそうな笑い声が降ってきた。

 

「ふふふ。シャルアとおんなじね」

 

 そう言ったのは母だった。

 小さな私を膝の上に載せ、妹よりは大きかったがそれでもまだとても小さな私の手を包み込むように握りながら、一緒に手動のミンサーを回していた。

 

「わたしもあんなに笑ってたの?」

「ううん。もっと笑ってたわ」

 

 もっと?

 そう言われて私は妹を見た。妹はこの世にこれ以上おもしろいものなど存在しないと言わんばかりに笑っていたが、もっととは一体。

 

「うそだよ」

「あら、お母さんがシャルアにうそついたことある?」

 

 ない。

 お母さんは私にうそをつかない。

 だったら私は妹よりもっと面白さを感じていたのだろう。

 そう思うとうずうずした。

 

「お母さん」

「はいはい」

 

 皆まで聞かず、母は私を膝から降ろした。

 私は妹の向かいでミンチを握った。ぐにゅっとした感触が手の平いっぱいに広がり指と指の隙間からはみ出してくる。

 これは、なんというか。

 私は無言で何度も繰り返した。何だか癖になる。高笑いするほどではないが、不思議とやめられない。

 右手でぎゅっ。

 左手でぎゅっ。

 両手でぎゅっ。

 そんなことを繰り返していたら、不意に顔に小さな粒がぺちっと当たった。

 ミンチに夢中だった顔を上げると、妹が今にも泣き出そうとしているところだった。

 

「あらあら、シェルクはちゃんとシェルクの分があるでしょ」

 

 母が苦笑しながらミンサーを回す手を止めて、妹を抱き上げてあやし始めた。どうやら夢中になっている私を見て、妹は自分の楽しみを横取りされると思ってしまったようだ。母の胸の中で妹はいよいよ号泣し始めた。

 

「ごめんなさい」

 

 私は母に謝った。

 怒られるとは思わなかった。こんなことで怒る人ではなかったし、そもそも母が怒ったところを見た記憶がほとんどなかった。ただ、妹と喧嘩をすると困ったような顔や哀しそうな顔をすることがあったから、そういう時は自分が悪いことをしてしまったのだと思った。今もきっとそうなるんだと思った。

 けれど違った。この時の母は笑顔のままだった。笑顔のまま、シェルクをあやしながら、私の頭も撫でてくれた。

 

「謝らなくて良いのよ。シャルアはもっとわがままでもいいくらいなんだから」

 

     *     *

 

 寝る前、灯りを消した自室で一人、そんな昔のことを思い出していた。

 その時のことは夕飯を食べながら妹にも話したが、当然ながらまったく覚えていなかった。

 それが申し訳なくて、あの時、つい謝罪が口をついて出てしまったのだ。

 こんなことをそのまま説明しても妹を余計に困らせてしまうだけだ。だから濁した。間が悪く仕事に戻らなくては行けなくなったせいで無用な煩悶を妹に抱かせることになってしまったのは不本意だったが。あれはあれで本心だったのだ。

 

「全部終わったら」

 

 全部。

 すなわちすべてを取り戻したら。

 もう過去の不幸など関係ないと。

 失った時間など大したものではないと。

 妹の記憶に残っていない過去の幸福は、私にはかけがえのない大切な思い出であり、そしてこれから妹に再び与えるべき手本ではあるのだけれど。

 その話をする度に妹が少しでも覚えていてはくれないかと期待するのではなく。

 どうすれば同じくらい幸福な思い出を作ってあげられるかと考えるのではなく。

 今と同じくらいの幸福な時間が実は昔にもあったのだと。

 ただただ、こんなこともあったのだと笑ってゆっくり話せるような。

 そんな日を目指して歩くのだ。


 

 

 

 fin.

 

 

 

 あれ、初志貫徹はどこにいった?

 あーいやきっとあれだ、子供の頃からずっとシャルアは妹思いだったってことだ。そんな描写書いてないけど。うんうん。そういうことにしとこう。

 

 

 トレーラー見るとゲームしたくなりますよね。その勢いのままに再開したいところですけど、酔いが。本当に。

 船内もけっこうきつかった。広々とした荒野で戦闘している分にはそんなに問題ないんですけど、屋内でカメラぐるぐるするときついですよね。船から降りれば後はスムーズに進めるはず、とか思っててやっとこさコスタについて解放されたと思ったら、あのセグウェイみたいなの?に乗ってトドメをさされました。だめだ。あのスピードで街中ぐるぐるはだめだ。絶望と共にコントローラーを置いたのが……、いつだ。セーブデータが、12月15日? まだ半年か。まだ全然最近じゃないか。一安心。

 

 暫くして体調も回復し、コントローラーを握り直してFF8を数十年ぶりに遊んでました。こっちなら酔わないから!

 ……と思ってたのに、まさかの電車の中のシーンの揺れで酔った。ガーデンで移動できるようになったらさらに酔った。白いSEEDの船探しとか本当に辛かった。哀しい。どうしてこんな体になってしまったのか。あの頃の三半規管よいまいずこ。もうカードゲームをするしかない。意気込んで頑張って、あの頃は出来なかったカードコンプリート達成。満足感でいっぱいになって、愛と友情、勇気の大作戦は発動直後に凍結中。

 

 また暫くして体調も回復し、ドラクエが40周年を迎えたとかでセールやってたから買っちゃった。ドラクエ!モンスターズ!テリーのワンダーランドRETRO!♡。スマホ持ってるのに画面がゲームボーイ! これなら酔わない。素晴らしい。最高。幸せ。めっちゃ遊んだ。せっかくだからダークドレアムを作ってみようと意気込んだ。デュランまで作った。……さすがに飽きた。いや、作るだけならもっとペース上げられるけど、配合したらまずはレベルカンストさせたくなるのが人の業というものでしょう。一回配合するごとに数時間はぐれメタル狩り。それを十数回?もっと?ちょっとさすがに。まだ????系にも至ってないけど、だいたい満足しちゃった。気が向いたらちびちび進めよう。

 

 なんだ、振り返ってみればけっこうな時間ゲームしてるな。その時間をリバースに費やせばとっくにクリアできたってことは考えてはいけない。

 仕事ももう少しで落ち着くし、リバース意欲も戻りつつあるし、そろそろDear Destinyも読み始めようかな。読んだらここで書きたいことももっと浮かんでくるかな。

 

 今日は、昨日(もう一昨日か)久しぶりに生で聴けた「love me, I love you」が突き刺さって涙ぽろぽろしちゃったものだから、とりあえずシェルクにもやもやしながら布団かみかみしてもらおうかと思って書き始めただけだったけど、形になって良かった。いつも通り読み返してないけど、雑記だから良し。

 一年空けずに更新したぞー。

 自分で自分を褒めてあげたいと思います。

 

 それでは。