ヒツジとサボテン

ヒツジとサボテン

なんとなく続けてみる。

 『只者』。CD発売に先駆けて全曲配信開始とかびっくり。でもAmazonMusicは対象外なんですよね。おとなしくCD届くまで待とうかと思ったけれど、待て、が出来ない残念な私は、iTuneMusicで全曲購入してしまったのでした。

 で、早速聴いてみれば、最後の最後に、聞き覚えのある懐かしい歌が。

 遡ること十四年ですか。

 2010年といえば、まだコロナもなく、東日本大震災も起こっておらず、今とはまったく違った価値観の中で生活を送っていましたね。その頃書いていたものを振り返ってみれば……、なんかW杯に夢中ですね。そんなにサッカーに嵌ってた時期があったのか。書いてること一つも覚えてないや。

 

 過去を省みるだとか、原点に立ち返るだとか、そういう行為は事あるごとに行うものですが、「やってしまったー」という後悔のどん底でとか、「反省するぞー」なんて形先行の意気込み有りきとかで行うより、ふっと掠めた香りで中学校の教室の記憶が惹起されるように、思いがけないタイミングで呼び起こされたものこそが、羞恥も伴って今の自分の目を少しだけ覚ましてくれるような、そんな気がする酔っぱらっていない素面の真夜中です。

 

 

 

 

 

 小話『cocoa』 written by 未

 

 

 

「太るぞ」

「身も蓋も無いことを言わないで」

 

 夜中、寝付けなくてひとりキッチンでココアを啜っていると、どうやら起こしてしまったらしい姉が私を見るなり言い放った。

 

「そこはホットミルクだろう」

「だって、甘い方が美味しいし」

 

 ホットミルクはあまり得意ではないのだ。なんだか牛乳感が強くて。

 

「怖い夢でも見たか?」

「ううん、ちょっと暑くて寝付けなかっただけ」

「熱いものを飲んだら逆効果だろう」

「いいの。気分なの」

 

 寝付けない時はホットココアと相場が決まっているのだ。

 

「カフェインだって入ってるんだぞ」

「……そう言いながらどうしてコーヒー淹れてるの?」

「喉が渇いたからな」

「カフェイン」

「入ってるな」

「ココアの10倍」

「まあだいたいそんなもんか?」

「寝られなくなるよ?」

「カフェインごときに私の眠りが妨げられるものか。私は一度寝たら朝まで絶対起きない」

「いま起きてきてるよ」

「まだ寝ていなかっただけだ」

「夜更かしはほどほどにね」

 

 そんな益体もない会話をしながら、私はココアを、姉はコーヒーを啜る。

 眠っているべき夜中に姉妹ふたりで静かな夜話。その少し特別な日常感が私の心を落ち着けてくれる。おかしな夢などどこかへと追いやってくれる。

 飲み干したカップを二つ、軽く洗って水切りへ。歯磨きももう一度。虫歯にならないように、ステインが沈着しないように。お口の健康は大切なのです。

 そして最後に挨拶を交わす。

 

「おやすみ、シェルク」

「おやすみ、お姉ちゃん」

 

 終わった一日の延長をもう一度終わらせる。身体を休めるために。心を休めるために。会いたい人に会いたいという気持ちを、一度心の奥の方へしまいこんで、またいつか目覚めた朝に、膨らんではち切れそうになったら、飛び出していけるように。

 今はただゆっくり。

 

 おやすみなさい。

 

 

 

 fin.

 

 

 

 

 

 今日はライブに行ってきました。稲葉さんのライブではなく別の方のライブです。にわかなのでアレコレ語るのは憚られますが、行けて良かった。とても格好良く、そしてとても楽しい空間でした。詳しい事情は存じ上げませんが、いつか復帰されたらもう一度行ってみたいものです。

 ちなみに稲葉さんのライブには先週行きました。スニーカー楽しみだなぁ。10月頃だったかな。あと4か月か。先は長いのか短いのか。楽しみに待ちましょう。そしてもう8年経ってるから、あと6年くらいで「あなたなしで(勝手な仮称)」も音源化されることも祈りつつ。今の音楽がいつか懐かしく耳に触れたときに、想起される今に、羞恥と諦観が大半ではあれど、少しくらいは胸を張れるような、そんな日々を過ごしていきたいものです。

 

 それでは。

 おやすみなさい。