家内の光とは10年間子宝に恵まれず

5年目頃には不妊治療を始め

2~3年続けました。

治療の甲斐はなかったけど

それもそういう人生だろうし

子供がいないことで、夫婦仲は良かったと思います。


会社の慰安旅行を控えて

風邪をひいた光は

一人、会社で留守番をすることになりました。

「あんまり無理しないで、なるべく寝てろよ!」

そう言って、北陸へバスの旅でした。


この時ばかりと羽目を外す社員は

バスの中で相当酔っ払うもんだから

観光は殆どへべれけで

私は、殆ど保護者と化していました。


へろへろの社員をやっとの思いでバスから降ろし

白山比咩神社に向かう。

歴史を感じる勇壮なお宮でした。


境内を回り終わった頃

家内から携帯に電話が入りました。

「翔ちゃん、今、病院から帰ってきた。」

「そうか、風邪薬もらってきたか?」

「いや、薬はもらわなかった。」

「なんで?」


「赤ちゃんできたみたい・・・。」

その電話からしばらく音信普通でした。

電話番号は聞いていたもの

こちらから連絡を取ることもありませんでした。


でも、以前のように頭から彼女のことが離れなくなっていました。

忘れようとすればするほど想いは募っていきました。


ある日私は彼女にショートメールでこちらのアドレスを伝えました。

すぐに、携帯にメールが届きました。

1週間から2週間に一度、他愛もないメールのやり取りが始まりました。

お互い伴侶がいる(彼女は間もなく結婚)。

利奈は気心知れた女友達。

もう会う事もないだろうし、数ヵ月後は日本にいない。

と、誰に対してか言い訳しながら

彼女のメールとのやり取りが

少しずつ私の生活の中で大きくなっていきました。


フィアンセが海外赴任前の研修で

遠距離になってしまった彼女は

その不平などを煩累にメールしてくるようになりました。

大人ぶって返信していたものの

私の中でその嫉妬は次第に大きくなってきていたのだと思います。


当時、かなり裕福な生活をしていて

確かに仕事に追われていて

月に一度休めるかどうかという忙しさでしたが

私にとってその生活は手放し難い大切なものでした。


一千万円を超すような車を惜しげもなくサーキットに持ち込み

たまの休みは草レースにもエントリーしていました。

そこで知り合った友人から仕事の方も広がりをみせて

業績も瞬く間に伸びていきました。


利奈は友達。

かみさんを大切にしていかなきゃ。

一人の女と添い遂げるっていうのも

今時珍しくて、ちょっとかっこいいだろう。

いつまでも思い出にしがみついててどうする。

そう自戒しながら

利奈とのメールの間隔は

どんどん狭まっていきました。

13年振りに利奈と再会して

今までの呪縛から解放たれたような気持ちになりました。

いつも彼女のことを思い出していました。

特に辛いことがあると、パブロフの犬のように

彼女が脳裏を過ぎりました。


再会したのはやっと忘れかけてきた頃でした。

でも、再会しても不思議と穏やかな気持ちでした。

心から彼女に幸せになって欲しいと思いました。


再会したのは息も白くなる頃。

結婚は来春だと言ってました。

彼女は初婚。

相手は再婚。

そして、ハワイで挙式して

すぐに旦那の仕事の都合で日本から遠く離れた南の島へ

夫婦で行くのだとか。


居酒屋で再会した時に

彼女はフィアンセのことを「ダー」といっていました。

いろいろ愚痴も言ってたけど幸せそうでした。


これでやっと忘れられるな。そう思いました。

自分から振っといて、未練がましく未だに好きで

自分でも矛盾だらけの気持ちが

やっと整理できる。


彼女と再会を果たして2週間ほど過ぎたころだったでしょうか?

久しぶりに仕事を早く終えて

家内と2人で食事をしている最中に

まさかとは思いましたが利奈から電話がありました。

家内を裏切るようなことは無かったので

その場で電話に出て話をしました。


『ねぇねぇ、コスラエ島がテレビに出てるから観てみて。』

そんな内容の電話でした。

私が少し戸惑っているのを察したらしく

『今、おうち?』

「あぁ、飯食ってる最中。」

『あっ、ごめんなさい。切るね、じゃ、また』

と言って電話はすぐに終わりました。

何も無いとは言えちょっと後ろめたくて

「飲み屋のママから」と咄嗟に家内に告げました。


なんだ?コスラエ島って。

そうか、2人が暮らす遠い遠い南の島か。

そんなこと、わざわざ電話してくるなよ。

俺は俺、利奈は利奈。それでいいじゃないか。

コスラエ島でもどこへでもさっさと行っちゃえ。


それからなんだかまたパブロフの犬みたいに

ふっとした瞬間に彼女を思い出すようになってしまいました。

俺は、彼女が好きなのか?憎いのか?

きっと両方なんだと思う。

しかも、きっと嫉妬までしている・・・。


その日家内は相当不機嫌でした。

再会2(彼女の名前は利奈)


今、目の前にいる彼女はあの時よりも少し弱く見えて、

何かを伝えるような目で、私見つめているように思えました。

『なんで、違う道を進んじゃったのかなぁ?

本当、大好きだったのよ、あなたのこと。』


それが始まりだったかもしれません・・・。


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「ごめん、ちょっと電話してくる。」

もう、9:00を過ぎているのに仕事の電話

中々手強い相手で、白い息を吐きながら

結構な時間になってしまい

用件が終わった時にはすっかり冷えてました。


心配になって利奈が様子を見にくると、

『翔ちゃん、すっかり大人になったね、

存じ上げてますなんて言っちゃってぇ~』

とちゃかされ、悪い気はしなかったけど

少々気恥ずかしくもありました。


『ちょ、ちょっと翔ちゃん、私明日結納なんだから』

私は咄嗟に彼女を引き寄せて

かなり力強く抱きしめていました。

暖簾の向こうではみんなワイワイやっているのに。

二人だけになって、何の躊躇もなく・・・。

利奈もそうは言ったものの

すぐに頬を胸に寄せてきました。


彼女の結婚に対する不安に対して

結婚の良さを偉そうに指南したり

今の自分の人生が充実していると話したり。

なのに、何故、今こうしているのか?

今抱きしめている利奈は

前にも増して華奢で

それでもまるでジグソーパズルの隣同士のような

隙間の無い、無二の安堵感が私を覆いました。

『翔ちゃん、私幸せになるね。』

『利奈、幸せになれよ。』

・・・。


帰ると家内が珍しく寝ずに待っていました。

その夜、何年も無かったのに

妻を抱きました。


浪人は許されないという環境で

どうしても進学したかった私は

家出をして自活を始めました。

田舎にしては割のいいバイトを見つけ

自力で進学しようと思っていました。

早朝から深夜まで働きました。


予備校に行く余裕などなく

独学で乗り切ろうとしていましたが

そう上手くは行きませんでした。


今思えば、実力の無さから受験に失敗したのに

彼女を恨むことで、精神の安定を得ていました。


数ヶ月でバイト先の幸子と同棲生活が始まり

大学に行って浮かれている連中と張り合うように

遊びまくる生活に終始しました。

バイト→遊び→SEX

その繰り返しの毎日でした。

幸子は、私にいつも安らぎを与えてくれました。

利奈とは正反対で、私以外の男には目もくれず

私のために生きてくれているような子でした。

(その後別れる時は殆どストーカー状態でしたが)


若気のいたりで、

そんな幸子と同棲までしていたにもかかわらず

手当たり次第、他の女の子を口説いては寝ていました。

最悪の男でした。


やりたい放題、遊びたい放題。

進学はどうするの?

同棲している彼女は?

遊んだ女の子が次々マジになっちゃうし

もう、ヤケクソな毎日でした。


家出までして、やろうとしたのは

こんなことだったのか?

全部利奈のせいだ。

でも・・・。

でも、未だ利奈が好きでした。

その気持ちだけはどうしようもありませんでした。


その年のクリスマス間近に

利奈と連絡を取りました。

「逢いたいんだ。」

『私付き合っている人がいるのよ。』

俺は同棲までしているっていうのに・・・。

「そうか、ごめんね。電話しちゃって。」

『待って、その人ね京都にいるのよ。

こっちに来ていた時に付き合うことになって

その後は電話だけ。クリスマスも・・・。』

しかも医大生だという。

私はコンプレックスの塊と化していました。

『クリスマスだって、きっと向こうで誰かと・・・。』

『やっぱり逢いたい。』


私は利奈とイブに逢う約束をしました。

その日までに医大生と別れるようにとも言いました。


「幸子、イブの日はお店が夜通しやることになってるから

クリスマスに2人でお祝いしような。」

何も知らない幸子は、私を信じて

とても嬉しそうにうなずいていました・・・。