会田誠展~天才でごめんなさい@森美術館~で懐古と未来してきた話 | SHARPNELSOUND Official Blog in ameba

会田誠展~天才でごめんなさい@森美術館~で懐古と未来してきた話

15年前に東京に引っ越してきた。

奈良というある程度のイナカエリアから上京してきた僕にとって、東京というのはテレビや雑誌で見るところであって、コンテンツであって、東京ディズニーランドと一緒で、その場にいることが非日常である空間であった。当時20歳というキリのいい年齢で東京にやってきた僕が、東京というエリアの非日常さに圧倒されつつも、その中でも一番「非日常」かつ「非現実」を感じる場所が恵比寿みるくというクラブだった。

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エントランスから階段を下りていくと、巨大フジ隊員対キングギドラが飾られたキャッシャーにたどり着く。この儀式が恵比寿みるく体験の始まりで、お金を払う前からして独特の感覚に高揚するのである。もちろん、キャッシャーの向こうの分厚いドアの奥からは「世界で一番ガバがカッコよく聞こえるサウンドシステム」から高速で連発されるキックの重低音が鳴り響いてくる。ドアを開けると、そこは熱気と風圧で普通の神経なら不快に感じるであろう音圧と、ごった返す人波が生み出す極限の快楽に包まれる空間だ。

当時のレギュラーパーティであるMurder Houseでは、DJ ISHIIさんがプレイするテンションの速掛けRuffneckからのARMY OF HARDCOREで爆殺されることしばし。EC8ORやSHITMATやDURAN DURAN DURANなどなど数えきれないマイヒーロー達の送りだす良質なオーバードライブサウンドを天井と壁面からフロアに吊り下げられたサウンドシステムの風圧に圧縮されながら一晩中浴び続けた。
2002年ごろ。
何度かそのステージにも立たせてもらう事ができ、何かオタクカルチャーとハードコアを組み合わせたイベントができないかと企画したときに、恵比寿みるくにてOTAKUSPEEDVIBEというパーティを日本國民さんと開催した。このイベントは、やや不純というか個人的な思い入れがたっぷりとあって、いまさらながらにネタバレすると、
「速ガバ時代のスピフリさんをみるくで見たい」(来日公演をことごとく見逃した思い入れ)
というのと、
「NO CARRIERをやりたい(95年ごろ開催されていた大阪の老舗草の根BBS・NAMACOLANDのオフ会。という名のクラブイベント)」(最高に大好きなイベントへの思い入れ)
という気持ちで開催したイベントだった。
イベント詳細については当時のフライヤー等も残っているので参照してもらうとして、NO CARRIER感を出したいがためにわざわざテレビを数台買ってゲーム機を持ち込んだりNO CARRIER陣営のC-TYPEさん、BLASTERHEADさん、HALLYさんに出演していただいたり、スピフリさんには96年当時のセットでお願いしたり、サイケアウツチームとラムちゃん対決してもらったりして、結果的に過剰かつ異常なハイテンションとハイデンシティ(高速度・高密度)な一晩となった。
僕はパーティ空間というのはオーガナイザーのインスタレーションアートだと考えていて、あの晩のみるくは自分の自我境界線がみるく全体に広がったような自己の拡張感に、僕自身が大好きでしょうがない大先輩たちの本気のサウンドが大音響で響き渡り、集った人たちが同じビジョンでそれぞれのパッションを感じている一体感に、その一晩はもう思い出すだけで目頭が熱くなる程に勢いよく感動した。

今、森美術館で開催されている会田誠展では、森美術館の広大な展示スペースに会田誠の作品がしっかりと、そして大量に展示されている。
そこには、みるくで僕らを迎えてくれた巨大フジ隊員の絵(巨大)もあるし、図版やネットの画像でしか見たことなかったが、脳の奥にしっかりと刻まれてきた様々な会田誠の作品のほとんどすべてを鑑賞することができた。インモラルで猥雑でコピペでハードコアでかつ繊細で緻密で根気の生み出した作品の数々。
R-18の部屋では壁に掛けられた巨大な「美少女」の漢字三文字と一人全裸で対峙した会田氏が延々1時間自慰行為に励む姿を撮影した「I・DE・A」や、2chのレスを古典的な草書で巻物にしたためた作品などが、美術作品として飾られている事も含めてアイロニカルで美術館展示を前提として作品作りをしているという会田氏のコメンタリーと合わせてみても、時間を忘れて館内を徘徊してしまうほどに刺激と挑発にあふれたエキシビジョンになっている。

中でも、自分が過去の自分と対峙せざるを得なかったのは、今回の展示会に向けて制作されたJumble of 100 Flowersを過ぎたところにある一室、それもかなり大型の一室の壁・天井・床すべてを小腸のモチーフで埋め尽くした部屋だった。これは昔のみるくB3の奥の部屋がオリジナルとなっていて、そのイメージをさらに拡大したもので、催眠音声の「あなたは今ピンクの部屋につつまれています」的な、ありえないぐらいのピンク感に圧倒される部屋だ。前後左右天地ともにつながった小腸のモチーフにかこまれてクラックラする。
この部屋に足を踏み入れ、展示説明の「恵比寿MILK」という単語に触れた瞬間、それまでに鑑賞した作品のビジョンが、過去に自分にインプットされた瞬間にフラッシュバックするという稀有な体験を得た。
作品と人生の時間軸が、差し込まれるような螺旋を描き、脳裏に浮かぶ。あぜ道と女子高生の絵、滝と女子構成の絵、旗を持つ女子高生の絵、切腹する女子高生の絵、手足を切り取られてなおも従順に悦び威嚇する女子高生の絵、食べられる女子高生の絵、空爆されるニューヨークの絵等など、弾けたシナプスの中にリアルが爆発した瞬間だった(中二病の影響で)。
そこには、みるくという刺激的な空間と会田誠の挑発的な表現が、自分の時間軸の根底に存在していたのであった。

たった今現在も、森美術館で会田誠展が開催されている。
恵比寿みるくは2007年に無くなっちゃったけど、ここに来れば、あの時感じた得体のしれない「みるく感」(僕にとっての東京という非日常)が感じられる。
そして、何よりもこの螺旋はこれからも続いていくんだなーと思い、どこかで感じていた喪失感を取り戻した。

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会田誠さん、天才でありがとう!

会田誠展:天才でごめんなさい | 森美術館



(DJ SHARPNEL/JEA)