人生の様々なリスクに備えて、私たちを守るセーフティネットの役割を果たしてくれるのが、「社会保障制度」です。

 

その中で、保険料の支払いを基本として、国民の多くのリスクに対応しているのが「社会保険制度」です。

皆さんが加入されている、年金や医療保険、介護保険、雇用保険、労災保険などですね。

 

それに対して、第2、第3のセーフティネットと言えるのが、「生活困窮者自立支援制度(せいかつこんきゅうしゃ じりつしえんせいど)」と「生活保護制度」です。

これらは、社会保険制度では救い切れない、生活困窮リスクに対応してくれます

 

「生活保護制度」に比べ、「生活困窮者自立支援制度」は、あまり聞きなれないかもしれません。名前も難しいし、自分たちには、縁のない制度のように感じられますね。

 

でも、この制度は、生活全般にわたる困り事に、ワンストップで対応してくれる「よろず相談窓口」として、意外と身近な所に存在しています。

 

固くるしい名前も変えて、住民に受け入れられやすいように、例えば、「くらしとしごとの相談センター」「生活サポートセンター」など、親しみやすい名前がつけられています。

 

この制度は、平成27年から始まった比較的新しい制度です。

相談窓口は、福祉事務所や民間に委託されて、全国に設けられています。

主な委託先は、社会福祉協議会をはじめとする社会福祉法人、NPO法人、株式会社や生協などです。

 

 

自治体のホームページを見ると、さまざまな紹介がされており、わかりやすいパンフレットも出ています。

 

たとえば、東京都の足立区では、「くらしとしごとの相談センター」として、次のような悩みを相談できるとなっています。

 仕事に関すること

  ・仕事を探しているが、なかなか見つからない

  ・働く自信がない

  ・仕事が長続きしない

 家族に関すること

  ・子育てや介護に悩んでいる

  ・家族にひきこもりがいる

  ・家族や恋人から暴力を受けている

 お金に関すること

  ・多額の借金があるが、どうすればいいかわからない

  ・家賃を数ヶ月間滞納しており、アパートを退去してくれと言われている

  ・雇用保険がもうすぐ切れてしまうが、その後の生活の目処が立たない

 

また、板橋区の窓口は、NPO法人ワーカーズコープ。

いたばし生活仕事サポートセンター」という名称で、次のような相談を受けています。

  ・ケガや病気をして、今後の生活が不安

  ・住む家がなくなりそう

  ・仕事をしたことがない、ブランクがあるので不安

  ・引きこもりの家族がいる

  ・近所に心配な人がいる

  ・どこに相談したらいいのかわからない

 

 

杉並区、豊島区、北区、練馬区など、「社会福祉協議会」が窓口になっている自治体もあります。

 

杉並区は、「くらしのサポートステーション」という窓口です。

  ・失業後、なかなか仕事がみつからず、家賃が払えない

  ・家族がひきこもっている。将来のことが心配

  ・計画的にお金が使えず、生活に困ることがある

  ・生活が苦しく、子どもに学習環境を整えることができない

  ・住む所がない、失うおそれがある

 

このように、「生活困窮者自立支援制度」とは、生活や仕事、子育てまで、あらゆるお悩みを、相談できる制度です。
 
どんな支援があるのか
具体的な支援の内容や条件は、自治体によって異なりますが、主に、次のような支援があります。
 
自立相談支援
相談員が、支援プランを作成し、自立に向けた支援をしてくれます。
相談内容に応じて、関係する専門機関への引継ぎを行ったり、生活福祉資金貸付制度生活保護の申請に繋げます。
 
✳️生活福祉資金貸付制度
低所得者、高齢者、障害者などが、安定した生活を送れるよう、都道府県の社会福祉協議会が、無利子または低利子で資金の貸付けや、必要な相談や支援を行う制度。
生活支援費や福祉費などがある。
 
 住居確保給付金の支援
離職などにより住居を失った方などに、就職に向けた活動をすることを条件に、一定期間、家賃相当額を支給します。
 
家計相談支援
日常のお金の使い方の見直しや、収支のバランスなどについてアドバイスをし、安定した家計管理が行えるよう支援します。
債務等の状況に応じて、公的制度や貸付など他制度も紹介します。
 
就労支援
就職が実現するまで、相談員がサポートするとともに、ハローワークとの連携により、職業紹介を行います。
 
就労訓練
直ちに一般就労することが難しい方のために、訓練としての就労体験や、支援付きの雇用といった機会を提供します。
 
就労準備支援
就労が困難な人に、カウンセリング等を通じて、働く意欲を引き出したり、知識習得を促すプログラムを提供します。
 
一時生活支援
住居を失った人に、緊急的に宿泊場所や衣食を提供し、その後の就労支援などのサポートを行います。
 
子どもの学習・生活支援
経済的な問題など、さまざまな家庭の事情により、十分な学習環境が不足していたり、学校や家庭以外での居場所を必要としている子どもを対象にした、学習教室と居場所を提供する事業です。子どもと保護者双方に必要な支援を行います。
 
 
「つなぐ」ことも大事な役割です
この制度は、失業や借金、保険料や税金の滞納から、ひきこもり、ニート、DVや虐待まで、幅広い相談を、ワンストップで受け付けます。
 
というのも、この制度の目的は、周りのサポートを受けられないまま、生活に行き詰まりかけ、生活保護に至る恐れのある人を、早期から発見・支援し、自立への道をサポートすることだからです。
 
そのためには、制度内の支援メニューの提供をしながら、他の関係機関とも連携を取り、様々な支援機関や支援制度に繋いで行くことも、重要な役割です。
 
繋げる先は、福祉事務所や地域包括支援センター、地域のサポートステーション、ハローワークや法テラスなど、様々な専門機関です。
その結果、各々の事情に合ったサポートを、受けることができるのです。
 
コロナ禍で、職を失うなど、困窮している人が増えていることを受け、給付金の条件等を拡大している自治体もあります。
 
生活困窮者自立支援制度は、困り事のよろず相談窓口として、生活に困って行き詰まり、孤立する人の自立をサポートするセーフティネットとして、これから先、ますますその重要性が増していくのではないでしょうか。
 
主な相談の流れ