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本日ご紹介するのは、
『報酬と給与の判断基準とは?』です。


今回は病院での事例をご紹介いたします。平成24年の9月に確定した判決です。この判決では原告の主張が認められず、原告に支払われた報酬は、給与として認定されています。


まずは事例の簡単な概要です。
麻酔科医である原告は、複数の病院の間で手術中の麻酔管理等を業務内容とする契約を締結し、各病院から受けた報酬を「事業所得」として申告していました。しかし、税務当局が「給与所得」として更正処分等を行いました。
この更正処分等に対して原告が訴えを起こした事例です。


原告は、麻酔医療について高度の専門性を有し、手術の指揮監督者として独立して業務を行っているから、原告の収入が「事業所得」に該当する旨主張しました。


これに対して税務当局は、本件の原告の労務内容は、所定の日時に出勤が求められ、各病院から勤務地、手術件数が指定される等時間的にも空間的にも指揮監督を受けていたとして「事業所得」に該当しない旨主張しました。


裁判所の判断は、
1.事業所得の本質は、自己の計算と危険において独立して反復継続して営まれる業務から生ずる所得である点にあり、給与所得の本質は、自己の計算と危険によらず、非独立的労務、すなわち使用者の指揮命令ないし空間的、時間的な拘束に服して提供した労務自体の対価として使用者から受ける給付である点にあると考えられる。
2.麻酔業務から生ずる費用は、基本的に病院側が負担しており、原告は、たとえば高額の麻酔機器を購入することによって生じる費用(減価償却費)が麻酔業務から生じる収益を上回るなどして麻酔業務による損益計算が赤字になるというような事業の収支から一般的に生じ得る危険を負担することはない。
3.原告は、麻酔を担当する前日に、病院側からファクシミリ送信の方法により、患者数や各手術の内容等の情報の提供を受けてこれに従っていたことが認められ、このような麻酔という業務を行う対象、場所、時間など業務の一般的な態様について病院側の指揮命令に服していたものと認められる。
4.原告の勤務時間は、病院側との契約により定められていたこと、原告の業務は、病院内で術中麻酔管理等を行うことであったこと、病院側においては他の非常勤職員と同様に出勤簿で原告の勤務時間を管理していたことがそれぞれ認められ、原告は病院側の空間的、時間的拘束に服していたと認められる。

結論.以上によれば、原告が病院側から支払を受けた報酬は、自己の計算と危険において独立して営まれる業務から生ずる所得であるということはできず、原告は、病院側の指揮命令に基づいて、病院側による空間的、時間的拘束を受けて行った業務ないし労務提供の対価として報酬を受けたものであるから、所得税法28条1項に規定する給与所得に当ると認めるのが相当である。
として判決を下しています。


なお原告の主張に対しては、「業務遂行に必要な様々な判断が自分自身でできる=他者の指揮命令に服していない」ということにはならない。このことは、国会議員や裁判官など、職務遂行に必要な判断等については、他者の指揮命令に服することなく独立して行っている職種についても、その報酬は給与所得とされていることからも明らかである。
として結論付けています。

報酬と給与の判断は、総合的に判断されます。1点をもって事業だと判断するのは、のちに給与とされる恐れもあるので、慎重に判断してくださいね。

また、以前に外注費と給与の違いについても書いてますので、よろしければ参考にしてください。



税理士:池田良博
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(給与所得)
第二十八条  給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与(以下この条において「給与等」という。)に係る所得をいう。
2  給与所得の金額は、その年中の給与等の収入金額から給与所得控除額を控除した残額とする。
3  前項に規定する給与所得控除額は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額とする。
一  前項に規定する収入金額が百八十万円以下である場合 当該収入金額の百分の四十に相当する金額(当該金額が六十五万円に満たない場合には、六十五万円)
二  前項に規定する収入金額が百八十万円を超え三百六十万円以下である場合 七十二万円と当該収入金額から百八十万円を控除した金額の百分の三十に相当する金額との合計額
三  前項に規定する収入金額が三百六十万円を超え六百六十万円以下である場合 百二十六万円と当該収入金額から三百六十万円を控除した金額の百分の二十に相当する金額との合計額
四  前項に規定する収入金額が六百六十万円を超え千万円以下である場合 百八十六万円と当該収入金額から六百六十万円を控除した金額の百分の十に相当する金額との合計額
五  前項に規定する収入金額が千万円を超え千五百万円以下である場合 二百二十万円と当該収入金額から千万円を控除した金額の百分の五に相当する金額との合計額
六  前項に規定する収入金額が千五百万円を超える場合 二百四十五万円
4  その年中の給与等の収入金額が六百六十万円未満である場合には、当該給与等に係る給与所得の金額は、前二項の規定にかかわらず、当該収入金額を別表第五の給与等の金額として、同表により当該金額に応じて求めた同表の給与所得控除後の給与等の金額に相当する金額とする。