父は業界大手の会社で社長をしていた。
通産省からの依頼で海外視察をしたり、NHKの番組でインタビューされたり。
とても立派で私の自慢の父だった。
ただ、家庭人としては落第。
仕事>遊び>家庭
自分が最優先で、家族はそれについてくるのが当然というタイプ。
母は随分と苦労をかけさせられていた。
そんな父がおかしくなった。
異変は主に夜中。
大きな声で怒鳴り散らす。
虫が出たと部屋のなかをグチャグチャにする。
最初は寝ぼけているのかと思っていたが、違った。
幻視というやつだ。
レビー小体型認知症。
父はどんどん壊れていった。
家に火をつけてやる。
(母を)殺してやる。
夫婦二人暮らしだった為、矛先はいつも母。
怖かったろうな。
普通の内科にかかって認知症を遅らせる薬というものを処方されてはいたが、もう限界だった。
専門の精神病院を受診。
そこで、薬が無い状態でどんな様子になるか観察し、あらためて最適な薬を処方するということで、一ヶ月の検査入院をすすめられた。
入院後、父は益々壊れた。
人の物を自分の物だと勘違いしてとってしまう。
便をそこらじゅうになすりつける。
仕方なく、拘束&鍵付きのつなぎ着用となった。
拘束されているため、歩けなくなり、当然足も駄目になり、車椅子でしか移動できなくなってしまった。
その後、薬を変えて、徐々に穏やかになってきた。
一ヶ月のはずだった入院は、すでに一年近くたとうとしている。
一番ひどい状態よりは改善されてはいるものの、歩けなくなってしまった認知症の父の介護を、年老いた母独りで面倒をみるのは無理だ。
このまま、父はこの病院でさいごを迎えることになるのだろう。
ちなみに私は飛行機の距離に嫁いでしまったため全くの役立たず。
姉は100キロ離れた場所で生活しているが、自分の家庭も仕事もある。それでも月に1~2回ほど実家に顔を出して母を助けてくれている。
認知症。
その人がその人でなくなってしまう病気。
なんて残酷な病気なんだろう。
家族に嫌われ疎まれてしまう前に、私は消えてなくなりたい。切実にそう願う。